障害者雇用に関する助成金制度とは?条件やいくら支給されるのかについて解説

障害者雇用に関する助成金制度とは?条件やいくら支給されるのかについて解説

「障害者雇用をする際に利用できる助成金について知りたい」「今の事業でどんな助成金を受け取れるのか知りたい」という方は多いのではないでしょうか。

今回は、障害者雇用に関する助成金制度について、対象の事業主や主な制度の例を紹介します。

障害者雇用に関する助成金制度について詳しくまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。

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森田洋生
1980年東京生まれ鹿児島在住

MBAの知識を活用して、
補助金や助成金の事業計画書作成事業を経営

顧客の事業を綿密に調査を行い、
計画書に一つ一つ魂を込めて
作成を行っている。

融資周り事情にも精通し、
国の認定支援機関に登録されている。

JAPANMENSA会員所属
趣味:料理つくり・ゲーム・SUP

目次

障害者雇用に関する助成金とは?

まずは、障害者雇用に関する助成金について、どういったものなのかを確認しましょう。

概要と目的

障害者雇用促進法は、障がい者の雇用機会を増やし、働きやすい環境を整えることを目的としています。企業は法定雇用率を達成する必要があり、バリアフリーな職場環境を整備し、適切なサポート体制を整えることが求められます。

国はこれらの取り組みを支援するため、助成金制度を提供しています。

対象となる事業主

障がい者雇用に関する助成金を受ける資格があるのは、雇用保険に加入している事業所です。厚生労働省は、助成金を受けるための基本条件として、次の3つを提示しています。

  • 雇用保険に適用されていること
  • 審査に協力すること
  • 申請期間内に申請を行うこと

助成金を受けるには、これらの条件を遵守する必要があります。

障害者雇用に関する助成金10種類について概要一覧

ここでは、障害者雇用の際に利用できる助成金について、以下10種類の制度を紹介します。

  • 障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金
  • トライアル雇用助成金
  • 障害者職場実習支援事業
  • 重度障害者等通勤対策助成金
  • 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
  • 障害者介助等助成金
  • 障害者雇用納付金制度
  • 障害者雇用安定助成金
  • 特定求職者雇用開発助成金
  • 人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)

それぞれの制度の概要を確認しましょう。

障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金

障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金は、障がい者の雇用を推進するために、作業施設や福祉施設を設置する事業主に支給されます。福祉施設には、保健施設や給食施設、教養文化施設などの福利厚生施設が含まれます。

作業施設の場合、設置にかかる費用の3分の2が助成金として支給されます。一方、福祉施設の場合に支給されるのは、設置費用の3分の1です。

これらの助成金は、障がい者の雇用環境を整え、彼らの自立支援を促進することを目的としています。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、企業が障がい者を3ヶ月間の試用期間で雇用する場合に支給されます。このプログラムは「トライアル雇用」として知られ、障がい者の雇用機会を増やすために導入されました。

この助成金には、「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」の2つがあります。それぞれのコースについて、概要を確認しましょう。

障害者トライアルコース

障害者トライアルコースでは、週に30時間以上の所定労働時間が設定されています。このコースの助成金は、精神障がい者の場合とそれ以外の障がい者の場合で支給額が異なります。

精神障がい者の場合、支給される助成金は最初の3ヶ月間は月額最大8万円、次の3ヶ月間は月額最大4万円です。一方、他の障がいを持つ方には、3ヶ月間で月額最大4万円の助成金が支給されます。

障害者短時間トライアルコース

障害者短時間トライアルコースでは、最初に週に10時間以上20時間未満の勤務から始め、徐々に週に20時間以上の勤務に拡大していくことが計画されています。

このコースの助成金は、対象者1人あたり最大で4万円が12ヶ月間支給されるものです。

障害者職場実習支援事業

障害者職場実習支援事業は、事業主が障がい者を雇用する経験がない場合に、ハローワークや関連機関と連携して実施される職場実習を支援する制度です。支給額は実習の日数や指導時間に応じて変動し、柔軟に対応しながら事業主の取り組みを支援します。

この制度では、実習対象者1人あたりの支給額は「日額5千円×実習日数」で計算されます。また、実習指導員の日当も支給され、1日の指導時間が4時間以上の場合は1万6千円、4時間以下の場合は8千円が支給されます。

重度障害者等通勤対策助成金

重度障害者等通勤対策助成金は、通勤が困難な状況にある重度の障がい者に対し、雇用主が障がい者の通勤をサポートするために提供されるものです。具体的な支援策としては、通勤援助者の委嘱助成金や通勤用バスの購入費などが挙げられます。

助成金の支給額は、実施される通勤対策の内容に応じて個別に決定されます。なお、助成金の限度額は、必要な通勤支援の費用に合わせて設定される仕組みです。

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金は、多くの重度の障がい者を雇用している事業主が、彼らの雇用環境を向上させるために事業施設の整備を行う際に利用できる支援制度です。この助成金の支給額は、実施する対策に応じて変動します。

対象者は、多数の重度の障がい者を雇用している事業主です。助成金の限度額は、施設の整備や改善にかかる費用に基づいて個別に決定されます。

障害者介助等助成金

障害者介助等助成金は、障がい者を雇用する企業が必要な介助者を配置したり委託したりする際に支給されます。例えば、聴覚障がい者を雇用する場合、手話通訳者の配置が該当します。

この制度の対象者は、障がい者を雇用し、そのために介助者を必要とする企業です。助成金の限度額は、介助者の種類や配置方法に応じて個別に決定され、企業の負担を軽減します。介助者の配置や委託にかかる経費を一部助成することで、障がい者の雇用を支援し、職場環境の改善を促進します。

障害者雇用納付金制度

障害者雇用納付金制度は、障がい者の雇用率を満たす企業に対して、調整金や報奨金を支給する取り組みです。

まず、100人を超える企業で法定雇用率を超える場合、1人あたり月額2.7万円の調整金が支給されます。さらに、障がい者を積極的に雇用する中小企業も報奨金の対象となります。

100人以下の中小企業で一定数以上の障がい者を雇用している場合、超過分ごとに月額2.1万円の報奨金が支給されます。これにより、障がい者の雇用を推進し、企業に対する支援を促進します。

障害者雇用安定助成金

障害者雇用安定助成金は、以下の3コースに分けられます。

  • 障害者職場適応援助コース
  • 中小企業障害者多数雇用施設設置等コース
  • 障害者職場定着支援コース

上記のコースについて、令和3年度から助成金の整理・統廃合が行われ、制度内容が大幅に変更されました。変更点も含めて、それぞれのコースの概要を解説します。

障害者職場適応援助コース

障害者職場定着支援コースは、以前は7つの分野において障がい者の職場定着を支援する助成金制度でした。しかし、令和3年4月に行われた助成金の整理・統廃合により、大幅に変更されました。

具体的には、柔軟な時間管理・休暇取得や短時間労働者の勤務時間延長、正規・無期転換などの分野が廃止され、一部は別の助成金制度に移行しました。例えば、正規・無期転換分野はキャリアアップ助成金の障害者正社員コースに移行しています。また、職場支援員の配置や職場復帰支援などの分野は、障害者介助等助成金の中に統合され、新たな助成金として提供されることになりました。

移行・統合後の3つの助成金制度について、概要を簡単にまとめましたのでご覧ください。。

助成金 概要
キャリアアップ助成金 非正規雇用者のキャリアアップを促進するための助成金制度障がいの有無に関係なく、有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換した企業に対して助成支給額は、転換した労働者の障がいの程度や転換にかかる費用に応じて決定
障害者介助等助成金(職場支援員の配置又は委託助成金) 障がい者の雇用定着を支援するための助成金業務を遂行する上で必要な援助や支援を行う職場支援員を雇用する企業に対して助成助成額は、支援する障がい者の人数や雇用形態に応じて異なる
障害者介助等助成金(職場復帰支援助成金) 病気や事故によって障がいを負った労働者の職場復帰を支援するための助成金労働者の職務開発や職場環境の整備を行う企業に対して助成助成額は、復帰支援にかかる費用や労働者の就労月数に応じて算出

これにより、障がい者の雇用継続や職場定着を支援する制度がより効果的に統合され、利用しやすくなりました。

中小企業障害者多数雇用施設設置等コース

中小企業障害者多数雇用施設設置等コースは、中小企業が障がい者を積極的に雇用し、そのために必要な施設や設備を整備する際に支援される制度です。この助成金の対象者は、重度身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者などの障がい者を5人以上雇用する企業です。

助成金の支給額は、施設や設備の設置に必要な費用や新たに雇用した障がい者の人数によって変動しますが、1,000万円から3,000万円が支給されます。

助成金を受けるためには、事業主が支給申請を行い、受給資格を得た翌日から1年以内に新たに対象労働者を5人以上雇用する必要があります。また、対象労働者が10人以上となった場合には、雇用のための設備を設置することが求められます。

障害者職場定着支援コース

障害者職場定着支援コースは、障がい者の職場適応を支援するために導入された制度です。この助成金は、職場適応が難しい障がい者に対して、ジョブコーチによる支援を行う企業に支給されます。ジョブコーチは、訪問型と企業在籍型の2つのタイプがあり、それぞれ異なる支援方法を提供します。

訪問型の場合、ジョブコーチの支援時間に応じて日額で助成金が支給されます。一方、企業在籍型の場合は、月額支給です。助成金の支給額は、支援方法や障がい者の種類、企業の規模などによって異なり、最大で月額12万円まで支給されます。

この制度の対象者は、職場適応が難しい障がい者を雇用し、ジョブコーチを配置する企業です。助成金の支給額は、支援内容や条件に応じて変動しますが、障がい者の職場定着をサポートする重要な支援制度となっています。

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、条件に該当する求職者を雇用する際に受け取れる助成金です。利用できる特定求職者雇用開発助成金には、以下3つのコースがあります。

  • 特定就職困難者コース
  • 発達障害・難治性疾患患者雇用開発コース
  • 障害者初回雇用コース

それぞれのコースについて、概要を確認しましょう。

特定就職困難者コース

特定就職困難者コースは、障がい者や高齢者、母子・父子家庭など、就職が難しい人々を雇用する企業に支給される助成金制度です。この助成金を受けるには、雇用された労働者を65歳まで継続して雇用し、さらにその期間が2年以上である必要があります。

支給額は、障がいの程度や企業の規模に応じて変動します。例えば、重度の障がい者や45歳以上の障がい者、精神障がい者に対しては、年額240万円(中小企業では100万円)が最大3年間(中小企業では1年6ヶ月)支給されます。

一方、短時間労働者に対しては、年額80万円(中小企業では30万円)が最大2年間(中小企業では1年間)支給されます。

発達障害・難治性疾患患者雇用開発コース

発達障害・難治性疾患患者雇用開発コースは、発達障害や難治性疾患を抱える個人を雇用する企業に提供される助成プログラムです。

この助成金を得るためには、対象の労働者をハローワークを通じて雇用し、その雇用を65歳まで継続させ、かつ、雇用期間が2年以上であることが必要です。事業主は、雇用した労働者に対する配慮事項を報告し、約半年後にはハローワーク職員による職場訪問を受けることになります。

申請者が中小企業の場合、短時間労働者1人あたり年額80万円を2年間、それ以外の労働者については年額120万円を2年間に渡って受けられます。申請者が中小企業でない場合は、短時間労働者1人あたり年額30万円を1年間、それ以外の労働者1人あたり年額50万円を1年間支給される仕組みです。

障害者初回雇用コース

障害者初回雇用コースは、障がい者の雇用に初めて取り組む中小企業に提供される助成金制度です。この制度は、従業員数が43.5人から300人の中小企業が対象となります。

具体的には、障がい者雇用義務制度の対象となる企業が、初めて障がい者を雇用した場合に適用されます。助成金の額は120万円で、雇用開始日から3か月後までの期間に、法定の雇用率を達成した場合に支給されます。

人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)

雇用力向上支援金は、企業が従業員のスキル向上を目指して行う教育訓練プログラムを支援する助成金です。この支援プログラムの中で、障がい者の職場での技能習得を重視する取り組みがあります。

助成金の額は、教育訓練施設の整備や更新にかかる費用のうち、4分の3が助成されます。さらに、訓練プログラムの運営に必要な経費についても一定の条件を満たす場合、支給されることがあります。

障害者雇用に関する助成金についてよくある質問

ここでは、障害者雇用に関する助成金について、よくある質問をまとめました。

個人事業主が申請できる障害者雇用助成金は?

個人事業主が申請できる障害者雇用助成金の一例として、以下のものが挙げられます。

  • キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)
  • トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)
  • 人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)
  • 特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)

障害者雇用助成金はアルバイトも対象になる?

障害者雇用の助成金は、アルバイトやパートタイムの労働者も対象となりますが、一定の条件があります。

助成金を受けるには、まず対象となる労働者をハローワークや民間の有料・無料職業紹介事業者を通じて雇用する必要があります。特定求職者雇用開発助成金を利用する際には、正社員である必要はありませんが、雇用を継続することが求められます。

有期雇用の場合でも、労働者が希望すれば契約更新が可能な雇用形態にすることが必要です。なお、勤務評価などで雇用の継続性を判断する場合、その労働者は継続的に雇用されているとみなされないため、助成金の対象外となります。

まとめ

今回は、障害者雇用で利用できる助成金・補助金制度について解説しました。障害者雇用の際に活用できる制度には、さまざまな種類があります。また、すべての制度を利用できるわけではなく、利用には一定の条件があるため注意しましょう。

それぞれの制度によって条件や助成される金額などが異なるため、自社にとって適切な制度を選び、利用を検討してはいかがでしょうか。

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