社労士業務のDX化でIT導入補助金は活用できる?制度内容を徹底解説

社労士業務のDX化でIT導入補助金は活用できる?制度内容を徹底解説

社労士の業務は多岐にわたるため、DX(デジタルトランスフォーメーション)化に取り組もうとする企業が増えています。社労士業務のDX化に取り組む際は、IT導入補助金を活用することで経費負担を軽減できるのをご存知でしょうか。

今回は、IT導入補助金の概要や社労士業務のDX化で活用できる申請枠について詳しく解説します。

社労士業務のDX化においてIT導入補助金を活用するメリットも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

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森田洋生
1980年東京生まれ鹿児島在住

MBAの知識を活用して、
補助金や助成金の事業計画書作成事業を経営

顧客の事業を綿密に調査を行い、
計画書に一つ一つ魂を込めて
作成を行っている。

融資周り事情にも精通し、
国の認定支援機関に登録されている。

JAPANMENSA会員所属
趣味:料理つくり・ゲーム・SUP

目次

IT導入補助金とは

IT導入補助金とは、生産性向上や事業拡大に取り組む中小企業や小規模事業者が、ITツールを導入する場合に活用できる支援制度です。

この補助金を受けるには、以下2つの条件を満たす必要があります。

  • IT導入補助金事務局に登録されているツールを導入すること
  • 補助金を申請する際には「IT導入支援事業者」と連携すること

補助額・補助率については以下の通りです。

申請枠補助額補助率
通常枠5万円〜150万円未満1/2以内
インボイス枠(インボイス対応類型)10万円〜350万円以下1/2〜4/5以内
インボイス枠(電子取引類型)(下限なし)〜350万円以下1/2〜2/3以内
セキュリティ対策推進枠5万円〜100万円以下1/2以内
複数社連携IT導入枠補助対象経費によって異なる(3,000万円以下)1/2〜4/5以内

社労士のDX化に利用できる申請枠について、詳しくは以下で解説します。

IT導入補助金の申請対象となる事業者一覧

IT導入補助金の申請対象となるためには、以下のいずれかの資本金額・従業員数に該当し、なおかつ日本国内で登記された、国内で事業を営む事業者であることが求められます。

<中小企業>

業種・組織形態資本金の額又は出資の総額従業員(常勤)
製造業・建設業・運輸業3億円300人
卸売業1億円100人
サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く)5,000万円100人
小売業5,000万円50人
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)3億円900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万円200人
その他の業種(上記以外)3億円300人
医療法人・社会福祉法人・学校法人300人
商工会・都道府県商工会連合及び商工会議所100人
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体主たる業種に記載の従業員規模
特別の法律によって設立された組合又はその連合会主たる業種に記載の従業員規模
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益)主たる業種に記載の従業員規模

<小規模事業者等>

業種・組織形態従業員(常勤)
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

出典:IT導入補助金とは

IT導入補助金の補助対象となるツール・サービス一覧

IT導入補助金は、申請枠によって補助対象のツールやサービスが異なります。以下に、それぞれの申請枠における補助対象項目をまとめましたのでご覧ください。

申請枠補助対象項目
通常枠供給・在庫・物流総務・人事・給与・労務顧客対応販売支援
インボイス枠(インボイス対応類型)会計ソフト受発注ソフト決済ソフトPC・ハードウェア
インボイス枠(電子取引類型)受発注システム
セキュリティ対策推進枠「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスのうち、IT導入支援事業者が提供し、かつ事務局に事前登録されたサービス
複数社連携IT導入枠地域DXの実現や、生産性の向上を図る取り組み

社労士業務のDX化で活用できるIT導入補助金の枠は大きく分けて2つ

社労士業務のDX化に取り組む際、IT導入補助金で活用できる枠は以下の2つがあります。

  • 通常枠
  • インボイス枠

それぞれの申請枠について、詳しい内容を確認しましょう。

通常枠

IT導入補助金の通常枠とは、中小企業・小規模事業者を対象に自社の課題解決やニーズの実現に向けたITツールを導入する際、経費の一部に対して支援を受けられる制度です。

この制度の受給対象となるITツールの要件として、以下の1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請することが求められます。

種別プロセス
業務プロセス共通プロセス顧客対応・販売支援
決済・債権債務・資金回収管理
供給・在庫・物流
会計・財務・経営
総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム
プロセス業務特化型その他業務固有のプロセス
汎用プロセス(単体での使用は不可)汎用・自動化・分析ツール

補助対象となる経費は、以下の通りです。

  • ソフトウェア:ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)
  • オプション:機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ
  • 役割:導入コンサルティング、導入設定 / マニュアル作成 / 導入研修

なお、補助額と補助率については以下の表をご覧ください。

プロセス数補助額補助率
1プロセス以上5万円以上150万円未満1/2以内
4プロセス以上150万円以上450万円以下

出典:通常枠|IT導入補助金2024

インボイス枠(インボイス対応類型)

IT導入補助金のインボイス枠(インボイス対応類型)とは、中小企業・小規模事業者が導入する会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフトなどの一部の経費を補助し、インボイス制度に対応するための企業間取引のデジタル化を推進することを目的とした制度です。

補助対象となるのは、以下の項目です。

  • ソフトウェア(必須):インボイス制度に対応し、会計・受発注・決済の機能を有するソフトウェア
  • オプション:機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ
  • 役務:導入コンサルティング、導入設定 / マニュアル作成 / 導入研修、保守サポート
  • ハードウェア:PC / タブレット / プリンター / スキャナ / 複合機 / POSレジ / モバイルPOSレジ / 券売機

補助額と補助率については、以下の表をご覧ください。

補助対象補助額補助率
インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフト50万円以下中小企業:3/4小規模事業者:4/5
50万円超〜350万円以下2/3以内
PC・タブレット等10万円以下1/2以内
レジ・券売機等20万円以下

出典:インボイス枠(インボイス対応類型)|IT導入補助金2024

社労士業務のDX化でIT導入補助金を活用するメリット

社労士業務のDX化に取り組むためにIT導入補助金を活用するメリットとして、以下の5つが挙げられます。

  • 返済不要である
  • 購入後に不採択となるリスクがない
  • 採択の回数に制限がない
  • 採択率が高い
  • 少額からでも補助対象となる

それぞれの項目について解説します。

返済不要である

IT導入補助金は、事業計画に基づいて採択されます。この補助金は導入後の事業実績報告が適正に行われれば、通常は返済の必要がありません。さらに、事業実績報告は企業が独力で行うのではなく、IT導入支援事業者と協力して作成されるため、安心して取り組みやすいでしょう。

ただし、事業期間中や補助金の交付後に不正行為や情報漏洩などの疑いが生じた場合は、補助金の返還が求められることに注意しなければなりません。このようなリスクについても、事前に周到に対策を練ることが重要です。

購入後に不採択となるリスクがない

IT導入補助金の申請では、先に購入した費用は補助対象外とされるため、補助金の採択後に購入手続きを行います。この仕組みにより、申請企業は採択通知を受けた後にツールを購入し、補助金が支給されないというリスクを回避できます。

ただし、補助金の支給は通常、導入実績の報告から1〜2ヶ月後に行われるため、導入や支払いの際にはその時期を考慮する必要があります。このようなタイムラグを踏まえて、事業計画を慎重に立てることが重要です。

採択の回数に制限がない

IT導入補助金の申請は、一度不採択になった場合でも、同年度内であれば何度でも再申請が可能です。毎年、複数の申請期間が設けられており、例えば2023年度では通常枠で10回、デジタル化基盤導入枠では17回の募集が行われました。2024年度も同様の運用が予想され、再申請の機会は多く存在するでしょう。

さらに、過去に採択された経験がある場合は、交付決定日から12ヶ月以上経過していれば、当該年度のIT導入補助金を再申請できます。これにより、積極的に補助金の活用を検討しやすいことも特長です。

ただし、申請期限直前には申請サイトへのアクセスが集中するため、余裕を持った日程での申請がおすすめです。計画的に申請手続きを進めることで、補助金を効果的に活用できるでしょう。

採択率が高い

近年、企業のオフィス環境が急速にデジタル化する中で、IT導入補助金への需要が急増しています。これに合わせて補助金の採択率も高水準を維持しており、2023年度の採択率は全国で75%を超え、申請企業のうち3社に4社が補助金を獲得しました。

制度改正による支援の充実は、企業にとって大きな魅力となっているようです。

少額からでも補助対象となる

IT導入補助金はさまざまな申請枠が設けられており、投資額が少額であっても申請が可能です。補助額の下限が設定されていない申請枠や、下限が設定されていても少額から支援される申請枠が存在するため、企業は気軽に補助金の申請を行えるでしょう。

この柔軟性により、中小企業や個人事業主などのさまざまな規模の事業者がIT導入補助金を活用しやすくなっています。

社労士にIT導入補助金の申請を依頼したい場合はどうしたら良い?

IT導入補助金を申請する上で、社労士への依頼を検討している方も多いのではないでしょうか。また、「申請は社労士しか行えない」といった情報を耳にし、本当なのかと疑問を持っている方もいるかもしれません。

ここでは、社労士にIT導入補助金を依頼すべきかについて解説します。

社労士の独占業務は「助成金の申請」

社会保険労務士の独占業務のひとつに、厚生労働省の助成金の申請があります。これは、他の士業では代理申請が認められていない重要な業務です。

助成金は、雇用関係や労働環境の改善に資するために交付される資金であり、社会保険労務士はこのような問題を専門的に扱う専門家です。そのため、社会保険労務士が助成金の申請を行うことは、法律で明確に規定されています。

このことから、助成金の申請には社会保険労務士の専門知識と能力が不可欠です。

補助金の申請代行は士業を問わない

補助金の申請代行には、特定の士業に限定されることはありません。社会保険労務士だけでなく、行政書士や税理士、そして士業以外のコンサルタントも代行可能です。

補助金の申請は、専門的な知識と経験が必要ですが、その要件を満たす者であれば誰でも申請が行えます。

IT導入補助金を利用したいと考えている企業や個人の方は、必ずしも社労士に依頼しなければならないわけではなく、自身のニーズに合った専門家を選択できます。

IT導入補助金以外に社労士業務に関連する補助金は何がある?

上述したIT導入補助金のほか、社労士業務に関連する補助金制度として、働き方改革推進支援助成金が挙げられます。なかでも、以下3つのコースは社労士業務に関連して活用しやすいでしょう。

  • 労働時間適正管理推進コース
  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 勤務間インターバル導入コース

それぞれのコースについて、内容を解説します。

働き方改革推進支援助成金:労働時間適正管理推進コース

働き方改革推進支援助成金の労働時間適正管理推進コースは、中小企業が労務・労働時間の適正化に向けた取り組みを行う際に活用できます。

このコースの対象事業主は、以下の通りです。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主
  • 勤怠管理と賃金計算のリンクや、賃金台帳を作成・管理・保存できるような管理ITシステムを用いていない
  • 賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することが、就業規則等に規定されていない
  • 36協定が締結・届出されている
  • 年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している

なお、達成目標として以下が求められています。

  • 新たに統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用する
  • 新たに賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することを、就業規則等に規定する
  • 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に関わる研修を、労働者および労務管理担当者に対して実施する

助成額については、上限額を100万円とし、対象経費の合計額に4分の3を乗じた額で決定します。

働き方改革推進支援助成金:労働時間短縮・年休促進支援コース

働き方改革推進支援助成金の労働時間短縮・年休促進支援コースは、中小企業が時間外労働の削減や有給休暇・特別休暇の促進を目指し、環境整備に取り組む際に利用できます。

対象事業主となるためには、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主
  • 成果目標に向けた条件を満たしている
  • 年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している
  • 上記のすべてをみたす中小企業主である

上記の成果目標とは、以下の3種類です。

  • 目標1:時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、または月60時間から80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行う
  • 目標2:年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入する
  • 目標3:時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ特別休暇の規定を新たに導入する

それぞれの目標達成における助成額については、以下をご覧ください。

目標助成額
1事業実施前の時間外労働時間数等が、月80時間を超えている場合
月60時間以下:200万円
月60時間から80時間以下:100万円
事業実施前の時間外労働時間数等が、月60時間を超えている場合
月60時間以下:150万円
2最大25万円
3最大25万円

働き方改革推進支援助成金:勤務間インターバル導入コース

働き方改革推進支援助成金の勤務間インターバル導入コースとは、事業者が勤務終了後から次の勤務までに一定時間以上の休息時間を設定する「勤務間インターバル」を設定して実施する際に活用できます。

対象となる事業者は、以下の全てを満たしている必要があります。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主
  • 勤務間インターバルを導入していない
  • 休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場のうち、対象となる労働者が半数以下
  • 休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している
  • 36協定が締結・届出されている
  • 過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態がある
  • 年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している

なお、成果目標として、休息時間が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入し、以下に取り組むことが求められます。

  • 勤務間インターバルの新規導入
  • 勤務間インターバルの適用範囲の拡大
  • 勤務間インターバルの時間延長

助成額については、以下の通りです。

事業内容助成額
新規導入休息時間数9時間以上11時間未満:80万円
休息時間数11時間以上:100万円
拡大や延長休息時間数9時間以上11時間未満:40万円
休息時間数11時間以上:50万円

まとめ

今回は、社労士のDX化で活用できるIT導入補助金の申請枠を詳しく解説しました。中小企業や個人事業主がDX化に取り組む際は、社労士業務のDX化についても検討し、利用可能な制度を活用して経費負担を削減することがポイントです。

本記事で紹介したIT導入補助金では、社労士業務のDX化に取り組む際に導入するツールに対して支援を受けられる可能性があります。自社の事業内容や状況に合わせて活用することを検討してみてはいかがでしょうか。

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