「リスキリングの際に使える補助金が知りたい」「補助金制度の活用方法について具体的に知りたい」と思っている方は多いのではないでしょうか。
今回は、リスキリングとはそもそも何なのかを確認した上で、リスキリングの際に活用できる補助金・助成金制度を紹介します。
リスキリングを行いたいと考えている企業や個人の方は、ぜひ記事の内容を参考にしてください。
リスキリングとは?
リスキリングとは、新たな知識やスキルを習得し、社会や技術の変化に対応していく取り組みのことをいいます。経済産業省では、リスキリングの定義として以下のように定めています。
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」
出典:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」
リスキリングの際に企業や個人事業主が活用できる補助金・助成金
まずは、リスキリングを行う際に企業や個人事業主が活用できる補助金・助成金制度を紹介します。
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)
- DXリスキリング助成金
上記の制度について、詳しい内容を確認しましょう。
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、企業の生産性向上に取り組む際、革新的な商品やサービスの開発、生産プロセスの改善にかかった経費の一部を支援してもらえる制度です。
この制度は、以下に当てはまる小規模事業者と中小企業が対象となります。
対象事業者 | 業種 | 条件 |
小規模事業者 | 商業・サービス業 | 従業員が5人以下 |
サービス業(宿泊業・娯楽業) | 従業員が20人以下 | |
製造業・その他 | 従業員20人以下 | |
中小企業 | 製造業 | 資本3億円以下もしくは従業員300人以下 |
卸売業 | 資本1億円以下もしくは従業員100人以下 | |
サービス業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員100人以下 | |
小売業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員50人以下 | |
ソフトウェア業 | 資本3億円以下もしくは従業員300人以下 | |
旅館業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員200人以下 | |
その他の業種 | 資本3億円以下もしくは従業員300人 |
なお、補助額については100万円から4,000万円、補助率は1/2から2/3の間で決定します。
申請枠 | 補助額 | 補助率 |
通常枠 | 100万~1,250万円 | 1/2(小規模事業者または再生事業者は2/3) |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 100万~1,250万円 | 2/3 |
デジタル枠 | 100万~1,250万円 | 2/3 |
グローバル市場開拓枠 | 100万~3,000万円 | 1/2(小規模事業者または再生事業者は3分の2) |
グリーン枠 | 100万~4,000万円 | 2/3 |
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業や超規模事業者が利用できる補助金制度で、事業の成長や業務効率化を目的にITツールを導入する際に支援を受けられます。
ただし、補助金を受給するためには、IT導入補助金事務局に登録されているツールを導入し、加えて補助金を申請する際には「IT導入支援事業者」と連携する必要があるため注意しましょう。
この補助金の対象事業者は、以下の通りです。
対象事業者 | 業種 | 条件 |
小規模事業者 | 商業・サービス業 | 従業員が5人以下 |
サービス業(宿泊業・娯楽業) | 従業員が20人以下 | |
製造業・その他 | 従業員20人以下 | |
中小企業 | 製造業 | 資本3億円以下もしくは従業員300人以下 |
卸売業 | 資本1億円以下もしくは従業員100人以下 | |
サービス業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員100人以下 | |
小売業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員50人以下 | |
ソフトウェア業 | 資本3億円以下もしくは従業員300人以下 | |
旅館業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員200人以下 | |
その他の業種 | 資本3億円以下もしくは従業員300人 |
補助額・補助率については以下の通りです。
申請枠 | 補助額 | 補助率 |
通常枠 | 5万〜150万円未満 | 1/2以内 |
インボイス枠(インボイス対応類型) | 10万〜350万円以下 | 1/2〜4/5以内 |
インボイス枠(電子取引類型) | (下限なし)〜350万円以下 | 1/2〜2/3以内 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万〜100万円以下 | 1/2以内 |
複数社連携IT導入枠 | 補助対象経費によって異なる(3,000万円以下) | 1/2〜4/5以内 |
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)
人材開発支援助成金は、従業員のスキルアップに取り組む企業が利用できる助成制度で、専門的な知識やスキルの獲得を目指すことを促進します。
人材開発支援助成金は、以下6つの制度に分かれています。
- 人材育成支援コース:雇用する被保険者に対して、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
- 教育訓練休暇等付与コース:有給教育訓練等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成
- 人への投資促進コース:デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成
- 事業展開等リスキリング支援コース:新規事業の立ち上げなどの事業展開等に伴い、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
- 建設労働者認定訓練コース:認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練を実施した場合の訓練経費の一部や、建設労働者に有給で認定訓練を受講させた場合の訓練期間中の賃金の一部を助成
- 建設労働者技能実習コース:雇用する建設労働者に技能向上のための実習を有給で受講させた場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
- 障害者職業能力開発コース:障害者の職業に必要な能力を開発、向上させるため、一定の教育訓練を継続的に実施する施設の設置・運営を行う場合に、その費用を一部助成
出典:人材開発支援助成金
なかでも、「事業展開等リスキリング支援コース」は、リスキリングに取り組む企業が利用できる制度の一つです。
事業展開等リスキリング支援コースの支給対象となるのは、以下の訓練を実施した場合です。
- 助成対象とならない時間を除いた訓練時間数が10時間以上であること
- OFF-JT(企業の事業活動と区別して行われる訓練)であること
- 職務に関連した訓練であって以下のいずれかに該当する訓練であること
出典:人材開発支援助成金に事業展開等リスキリング支援コースを創設しました
このコースの助成率・助成額については、以下の通りです。
<助成率・助成限度額>
経費助成率 | 賃金助成額(1人1時間) | 1事業所1年度あたりの助成限度額 | ||
中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 | 1億円 |
75% | 60% | 960円 | 480円 |
<受講者1人あたりの経費助成限度額>
10h以上100h未満 | 100h以上200h未満 | 200h以上 | |||
中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 |
30万円 | 20万円 | 40万円 | 25万円 | 50万円 | 30万円 |
DXリスキリング助成金
DXリスキリング助成金は、東京都内の中小企業や個人事業主が利用できる助成制度です。DX(デジタルトランスフォーメーション)に関する研修を実施する際、費用の一部に対して支援を受けられます。
この助成金の対象となるのは、以下に該当する事業者です。
業種分類 | 資本金の額又は出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
小売業・飲食業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 100人以下 | |
卸売業 | 1億円以下 | |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
助成額は、1申請あたり100万円(令和6年度の場合)を限度額として、対象経費の3/4まで(上限 75,000 円/助成対象受講者1人1研修)となります。
助成対象経費の例として、研修の受講料や教材代、付随する登録料・管理料、ヒアリング料(オーダーメイド研修のみ)が挙げられます。ただし、パソコンやインターネット使用料、食事代、交際費、消費税などは助成対象外です。
上記の経費について、次の条件を満たす受講者を対象に助成金が支給されます。
- 申請企業等の従業員
- 常時勤務する事業所の所在地が都内である者
- 研修ごとに、総研修時間数の8割以上を受講した者
リスキリングをする個人が申請できる支援制度
続いて、リスキリングをする個人が申請できる支援制度について、以下のものを紹介します。
- 教育訓練給付制度
- 求職者支援制度
- 自立支援教育訓練給付金
- リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
それぞれの制度内容を確認し、活用できるかどうかを検討してみましょう。
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度は、労働者のスキルアップやキャリア形成を促進し、雇用の安定と就職の促進を支援するための仕組みです。この制度では、厚生労働大臣が認定した教育訓練を修了すると、受講費用の一部が支給されます。
支給対象となる教育訓練は、専門性を高める「専門実践教育訓練」、特定の技術や知識を身につける「特定一般教育訓練」、基本的な能力を向上させる「一般教育訓練」の3つに分かれます。それぞれの対象者や支給額については以下の通りです。
教育訓練 | 対象者・支給額 |
専門実践教育訓練 | 労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練が対象受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6か月ごとに支給資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で支給失業状態にある方が初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する場合、受講開始時に45歳未満であるなど一定の要件を満たせば、別途教育訓練支援給付金が支給 |
特定一般教育訓練 | 労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給 |
一般教育訓練 | その他の雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練が対象受講費用の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給 |
出典:教育訓練給付制度
求職者支援制度
求職者支援制度とは、再就職や転職、スキルアップを目指す方が利用できる支援制度で、訓練の開始前から訓練期間中、訓練終了後までの求職活動について、ハローワークのサポートを受けられます。
この制度を利用し、職業訓練を受講するための要件は、以下の通りです。
- ハローワークに求職の申込みをしていること
- 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
- 労働の意思と能力があること
- 職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めたこと
出典:求職者支援制度のご案内
離職後に雇用保険を受給できない方や、収入が一定額以下の在職者の方は、月10万円の生活支援給付金を受給しながら職業訓練を受講できます。なお、給付金の支給要件を満たしていない場合でも、職業訓練は無料で受講可能です。
自立支援教育訓練給付金
自立支援教育訓練給付金とは、母子家庭の花屋父子家庭の父のスキルアップを支援する制度で、対象の教育訓練受講後に経費の60%までが支給されます。
この制度の対象となるのは、以下の要件を全て満たす方です。
- 母子家庭の母又は父子家庭の父であって、現に児童(20歳に満たない者)を扶養している
- 児童扶養手当の支給を受けているか又は同等の所得水準にあること
- 就業経験、技能、資格の取得状況や労働市場の状況などから判断して、当該教育訓練が適職に就くために必要であると認められること
給付金の下限は1万2,001円となっており、上限については以下の2パターンによって異なります。
- 雇用保険の一般教育訓練給付または特定一般教育訓練給付の対象となる講座を受講した場合、最大20万円
- 雇用保険の専門実践教育訓練給付の対象となる講座を受講した場合、修学年数×40万円、最大160万円
なお、対象講座は雇用保険制度が提供する教育訓練給付の指定教育訓練講座と、都道府県の長が対象としている講座です。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
キャリアアップ支援事業は、個人が新しいスキルを習得し、転職を通じてキャリアを向上させるための取り組みを支援するプログラムです。この事業では、キャリアの相談からスキルの習得、そして転職までを網羅的にサポートするサービスを提供する事業者に助成金が支給されます。
主なサービス内容として、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業に参画している事業者から以下の3つを受けられます。
- キャリア相談(無料)
- リスキリング(受講費用の負担を軽減)
- 転職支援(無料)
補助事業者を経由すると、リスキリング講座の受講費用について、上限を40万円とした1/2相当額が軽減されます。また、リスキリング講座の受講を経て転職に成功し、その後1年間継続的に就業していることが確認できた場合、上限を16万円として追加的に講座受講費用の1/5相当の額を受取り可能です。
リスキリングの際の補助金についてよくある質問
ここでは、リスキリングの際に活用できる補助金について、よくある質問をまとめました。
東京都が募集しているリスキリング補助金は何がある?
東京都では、中小企業のDX推進に取り組み、従業員がDX講座を受講する際の費用負担を軽減する「DXリスキリング助成金」が提供されています。
DXリスキリング助成金は、都内の中小企業が従業員に対してDX講座へ派遣もしくはeラーニング等により受講させた場合に利用できます。
なお、この制度の対象となるのは以下に該当する事業者です。
業種分類 | 資本金の額又は出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
小売業・飲食業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 100人以下 | |
卸売業 | 1億円以下 | |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
以下の条件を満たす受講者を対象に、研修の受講料や教材代、付随する登録料・管理料、ヒアリング料(オーダーメイド研修のみ)が助成されます。
- 申請企業等の従業員
- 常時勤務する事業所の所在地が都内である者
- 研修ごとに、総研修時間数の8割以上を受講した者
助成額については、1申請あたり100万円(令和6年度の場合)を限度額とし、対象経費の3/4まで(上限 75,000 円/助成対象受講者1人1研修)と定められています。
大学生でもリスキリング補助金を使える?
多くのリスキリング補助金には年齢制限がないため、大学生も利用できます。ただし、受講開始時やキャリア相談の開始時には、パートやアルバイトを含む企業との雇用契約があり、雇用主の変更を目指していることが条件となるようです。
大学生がリスキリング補助金を活用することで、将来のキャリア形成に向けた就職前のスキルアップが図れるかもしれません。
まとめ
今回は、リスキリングを行う際に活用できる補助金制度について解説しました。リスキリングの際の費用負担をサポートする制度はさまざまなものがあるため、状況に応じて適切な制度を活用することが欠かせません。
記事で紹介した制度を参考にしながら、自身のキャリアアップやスキルアップに向けた行動をしていけるよう、補助金制度を活用してみてください。