【令和6年度版】キャリアアップ助成金とは?全コースについて徹底解説

【令和6年度版】キャリアアップ助成金とは?全コースについて徹底解説

非正規雇用労働者の待遇改善のためにスタートしたキャリアアップ助成金ですが、言葉を聞いたことはあっても詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

今回はキャリアアップ助成金とは何か、その全コースについて徹底解説していきます。

キャリアアップ助成金について詳しく知りたい方には有益な記事になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

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森田洋生
1980年東京生まれ鹿児島在住

MBAの知識を活用して、
補助金や助成金の事業計画書作成事業を経営

顧客の事業を綿密に調査を行い、
計画書に一つ一つ魂を込めて
作成を行っている。

融資周り事情にも精通し、
国の認定支援機関に登録されている。

JAPANMENSA会員所属
趣味:料理つくり・ゲーム・SUP

目次

キャリアアップ助成金とは?

キャリアアップ助成金とは、企業内で非正規雇用の労働者(有期雇用労働者等)を正社員化したり、雇用条件を改善するために事業主に対して国(厚生労働省)から受けられる助成金制度のことを言います。

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の処遇改善やキャリアアップにより労働者の意欲が向上し、雇用者側も事業の生産性を高めるという目的で制度を設けています。

非正規雇用とは、正規の雇用を結んでいない雇用形態のことで、2022年の総務省の労働力調査によると、国内では約37%の労働者が非正規雇用(有期雇用労働者等)という結果になっています。

非正規雇用の種類には、契約社員や派遣社員、パートタイムやアルバイトなどがあり、「正社員」や「正職員」以外の労働者はこれにあたります。

キャリアアップ助成金は誰がもらえる?いくらもらえる?2つパターンを解説

キャリアアップ助成金は、その制度の対象となる取り組みを行ない一定の条件を満たした雇用主に対して、厚生労働省から助成金が支給されるようになっています。

直接国が非正規雇用の労働者に支給するものではありませんのでご注意下さい。

キャリアアップ助成金が受給できる事業主の対象は、以下の全てに該当していなければなりません。

  • 雇用保険適用事業所の事業主
  • 雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を配置している事業主
  • 雇用保険適用事業所ごとに対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主
  • 実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を作成し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主
  • キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主

キャリアアップ助成金は、「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2つに分かれています。

下記でそれぞれの項目に分けて、受給できる金額を解説していきます。

非正規雇用労働者を正社員雇用にした場合

非正規雇用労働者の正社員化支援には、「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」の2つがあります。それでは見ていきましょう。

1.正社員化コース

正社員化コースは、非正規雇用労働者を正社員化した場合に助成金が適用されます。

非正規雇用労働者のキャリアアップと雇用安定を目的とし、社会貢献を目指します。

正社員化コースの対象は、「有期雇用労働者」「無期雇用労働者」「有期派遣労働者」「無期派遣労働者」です。

自社のパートやアルバイトを正社員にした場合や、派遣会社から自社に派遣されていた派遣社員を正社員として雇用した場合も適用されます。ただし、正社員化コースは1年度一事業所あたり20人までしか申請できませんのでご注意下さい。

1人当たりの助成額は以下になります。

企業区分条件支給金額
中小企業有期雇用非正規雇用労働者を正社員にした場合57万円
無期雇用非正規労働者を正社員にした場合28万5000円
大企業有期雇用非正規雇用労働者を正社員にした場合42万7500円
無期雇用非正規労働者を正社員にした場合21万3750円

また、正社員化コースは、条件に該当すると加算される制度も設けられています。

加算措置制度は中小企業も大企業も同様の助成額です。

以下の表にまとめました。

条件加算金額
派遣社員を派遣先で正社員として直接雇用対象者が一人親家庭の母または父人材開発支援助成金の訓練終了後に正社員へ転換
有期雇用非正規労働者を正社員にした場合28万5000円9万5000円9万5000円
有期雇用非正規雇用労働者を正社員にし、生産性向上要件を満たす場合36万円12万円12万円
無期雇用非正規労働者を正社員にした場合28万5000円4万7500円4万7500円
無期雇用非正規労働者を正社員にし、生産性向上要件を満たす場合36万円6万円6万円

2.障害者正社員化コース

障害者正社員化コースは、障害者の非正規雇用労働者を正社員などに転換した場合に支給適用となる助成金制度のことを言います。

障害者正社員化コースの対象は、下記の条件を満たす労働者となります。

  1. 該当事業主に非正規雇用労働者として6ヵ月以上雇用されている
  2. 転換実施日の時点で身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、難病患者、脳の機能的損傷にもとづく精神障害である高次脳機能障害であると診断された者のいずれかに該当する
  3. 就労継続支援A型事業(障害者・難病患者が、雇用契約を結び一定の支援を得ながら職場で働く福祉サービス)利用者ではない

その他にも細かい条件がありますので、申請の際には必ず確認をして下さい。

障害者正社員化コースの助成額を下の表にまとめました。

企業区分支給対象者条件支給金額
中小企業重度身体障害者重度知的障害者精神障害者有期雇用から正規雇用へ120万円
有期雇用から無期雇用へ60万円
無期雇用から正規雇用へ60万円
重度以外の身体障害者重度以外の知的障害者発達障害者難病患者高次脳機能障害と診断された者有期雇用から正規雇用へ90万円
有期雇用から無期雇用へ45万円
無期雇用から正規雇用へ45万円
大企業重度身体障害者重度知的障害者精神障害者有期雇用から正規雇用へ90万円
有期雇用から無期雇用へ45万円
無期雇用から正規雇用へ45万円
重度以外の身体障害者重度以外の知的障害者発達障害者難病患者高次脳機能障害と診断された者有期雇用から正規雇用へ67万5000円
有期雇用から無期雇用へ33万円
無期雇用から正規雇用へ33万円

非正規雇用労働者の処遇改善をした場合

非正規雇用労働者の労働条件を見直す処遇改善支援には、「資金規定等改定コース」「資金規定等共通化コース」「賞与・退職金制度導入コース」「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」「短時間労働者労働時間延長コース」の5つのコースがありました。

選択的適用拡大導入時処遇改善コースは、2022年の9月30日までの時限措置となっているので現在はありませんが、含めて解説していきますのでそれぞれ見ていきましょう。

1.資金規定等改定コース

非正規雇用労働者の賃金規定を見直して、3%以上昇給した事業主に対して助成金を受け取れます。上限は1事業所1年度あたり100人で、申請は1年度に一回だけとなっています。

受け取れる助成額を下の表にまとめました。

支給要件支給額(1人あたり)
中小企業大企業
賃金改定率が3%以上、5%未満5万円3万3000円
賃金改定率が5%以上6万5000円4万3000円

また、職務評価を決められた条件の手法で実施し賃金規定の増額改定を行った場合は、一事業所あたり中小企業に20万円、大企業に15万円の加算が受けられます。

2.資金規定等共通化コース

非正規雇用労働者に対して、正規雇用労働者と共通の職務などに応じた賃金規定を作成し、適用した場合に支給される助成金です。

支給額は、1事業所あたり中小企業で60万円、大企業は45万円となります。

3.賞与・退職金制度導入コース

非正規雇用労働者に対して賞与・退職金制度を新たに設けて、支給または積み立てを行った場合に支給される助成金が、賞与・退職金制度導入コースです。

支給される額は以下の通りです。

企業区分賞与又は退職金制度を導入賞与及び退職金制度を同時に導入
中小企業40万円56万8000円
大企業30万円42万6000円

4.選択的適用拡大導入時処遇改善コース

選択的適用拡大導入時処遇改善コースは、2022年9月30日までの時限措置でした。

労使合意にもとづく社会保険適用拡大を行い、対象外であった非正規雇用労働者を社会保険の被保険者にした場合に受給されるコースで、1事業所あたり中小企業で最大24万円の助成額となっています。

2023年10月20日から新設された「社会保険適用時処遇改善コース」は、この選択的適用拡大時処遇改善コースの要素も入っている新たなコースとなっています。

5.短時間労働者労働時間延長コース

短時間労働者労働時間延長コースとは、非正規雇用労働者の労働時間を延長することで、新たに社会保険の被保険者とした場合に受給されるコースです。

このコースは、「令和6年3月末の取組まで助成」と厚生労働省のホームページに記載があったので、令和6年度は変更の可能性もあるかもしれませんね。

短時間労働者労働時間延長コースの助成額は以下になります。

①週所定労働時間を3時間以上延長し、新たに社会保険に適用した場合

企業区分3時間以上延長
中小企業23万7000円
大企業17万8000円

②労働者の手取り収入が減少しないように週所定労働時間を延長するとともに基本給を昇給し、新たに社会保険を適用した場合

企業区分1時間以上2時間未満延長(10%以上増額)2時間以上3時間未満延長(6%以上増額)
中小企業5万8000円11万7000円
大企業4万3000円8万8000円

キャリアアップ助成金が支給されない5つのケース

キャリアアップ助成金は、条件を満たしており申請すれば通常なら受給できますが、支給されないケースもあります。

その、受給されない5つのケースを項目ごとに解説していきます。

労働基準法などの法令に違反している

支給申請日の前日から過去1年以内に労働関係の法律に違反したことのある事業主は、キャリアアップ助成金の対象になりません。

労働時間や残業代の算出方法、有給休暇の付与や取得など最新の労働基準法を遵守しているか十分に確認しましょう。

さらに、労働者の処遇が改善されていないなどのキャリアアップ助成の意図に沿わない経営を行う事業所は対象外ですので、労働環境や社内規定を改めて見直すことをおススメします。

書類の修正や追加書類の提出に対応しない

キャリアアップ助成金の申請にあたり申請書や添付書類などに不備があった場合、都道府県労働局長から書類の修正や追加書類の提出を求められる場合があります。

これに対応しなかったり、期日までに間に合わない場合は支給の対象になりませんのでご注意ください。

実地調査に協力しない

キャリアアップ助成金の申請後に審査のために事業所の実地調査が行われることがあります。

予告なく行われることもあり、拒否すると助成金支給を受けることができなくなります。

調査時に提出を求められた台帳や帳簿が不正に改ざんされて原本とは異なっていたり、それが明らかになった場合も不支給となりますのでご注意下さい。

不正受給から5年以内に申請している

不正受給をしたことのある事業主は、以後5年間はキャリアアップ助成金の申請・受給ができません。

不正受給とは、虚偽の申告によって本来なら受け取れないはずの助成金を不正に受け取ることや、虚偽の程度にかかわらず真実とは異なる申告をして助成金を受け取った場合を指します。

助成金受給後の会計検査院検査に協力しない

キャリアアップ助成金の支給後に会計検査院が会計検査を行う場合があります。

この会計検査に協力を同意しないと支給されなくなりますので、あらかじめ会計検査への協力は同意しておきましょう。

なお、検査対象となる可能性を踏まえて申請書や添付書類の写しなどは、支給決定から5年間は保存しておきましょう。

キャリアアップ助成金の審査は厳しい?申請の流れを確認しよう

キャリアアップ助成金の審査は厳しいのかどうか、申請の流れについて項目に分けて解説していきます。

キャリアアップ助成金の審査は厳しい?

キャリアアップ助成金制度は、申請する要件を満たすだけでも最短で半年以上かかり、審査結果がわかるまでに1年程の時間を要します。

申請者が提出した雇用契約書や就業規則、賃金台帳などさまざまな書類が厳密にチェックされます。特に未払いの残業代などについては踏み込んだ審査が行われます。未払いが発覚すれば不支給となってしまいますので、助成金の取り扱いに関する書類や指針などは熟読してしっかり対応していきましょう。

厳しい審査とはいえ、キャリアアップ助成金は要件や手続きのタイミングなどが細かく決められており、ルール通りにさえできていれば通常は助成金をもらうことが可能です。

規定が曖昧で審査する人の判断によって支給・不支給が決まるものよりは公平といえます。

キャリアアップ助成金の申請の流れ

キャリアアップ助成金の申請の流れを順番に解説していきます。

①キャリアアップ計画の作成と提出

まず、キャリアアップ助成金を申請するには「キャリアアップ計画」を作成する必要があります。キャリアアップ計画とは、非正規雇用労働者のキャリアアップを計画的に進めるための取り組み内容をまとめた計画書のことです。

キャリアアップ管理者を決め、厚生労働省が定めているガイドラインに沿って取り組みの流れを決めます。対象者となる労働者の代表からもヒアリングを行います。

作成した計画書を、都道府県の労働局もしくはハローワークに提出します。

②就業規則などの改定

正社員化コースの場合、非正規雇用労働者に適用される就業規則がないときは、正社員転換制度が規定された非正規雇用労働者用の就業規則を別途作成したうえで、6ヵ月以上の適用期間が必要になります。

更に、正社員への転換にあたって賃金を3%以上増額しなければならない点や、昇給制度・賞与・退職金制度などを整えておく必要があります。

正社員に転換するための条件や手続き方法などを組み入れたうえで、就業規則を労働基準監督署に提出しましょう。ただし、労働者が10人未満の小規模事業所は就業規則の作成や提出が義務付けられてはいません。

就業規則は作成しておく必要がありますが、労働基準監督署への提出については就業規則申立書の提出でも代用可能となっています。

③就業規則などに基づき正社員に転換

就業規則などで定めた内容に沿って、対象者と面談などを実施し雇用契約書(労働条件通知書)を交付します。

賃金の3%以上増額を行い、正社員に転換した上で雇用を継続しましょう。

④転換後に雇用を継続していく

対象労働者を正社員に転換した後6ヵ月は雇用し、賃金を支払うことが求められます。

例えば正社員に転換後に、労働者が病気や妊娠などを理由として休職した場合でも、就業日数が11日以上あれば1ヵ月としてカウントします。

⑤支給申請

6ヵ月間賃金を労働者に支払うと、助成金の申請が可能になります。

申請期限は6ヵ月目の賃金を支払った日の翌日から2か月以内となっています。

キャリアアップ助成金はいつまでもらえる?

キャリアアップ助成金制度は、2024年3月現在ではその制度自体は継続されていますが、年度によって一部の制度が時限措置で終了になったり新しく開設したりの変更があります。

上記でもお伝えしましたが、例えば処遇改善コースの「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」は、2022年9月30日までの時限措置でした。

2023年10月20日からは「社会保険適用時処遇改善コース」が新設されており、年々制度の中身が変わってきています。

キャリアアップ助成金の制度自体は継続していますが、コースの金額や条件が一部変わったり、コースの変更などが頻繁に行われているので、毎年しっかりチェックしていきましょう。

キャリアアップ助成金についてよくある質問

キャリアアップ助成金についてのよくある質問をピックアップしたので見ていきましょう。

キャリアアップ助成金は個人事業主でももらえる?

キャリアアップ助成金は、個人事業主でももらうことが可能です。

キャリアアップ助成金の支給対象事業主は以下になります。

  • 雇用保険適用事業所の事業主
  • 雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を配置
  • 雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ計画を作成し、労働局長の認定済
  • キャリアアップ助成金対象の労働者について、労働条件や勤務状況、賃金支払い状況などがわかる書類を作成
  • キャリアアップ計画期間中に、非正規雇用労働者のキャリアアップに関する取り組みを実施

キャリアアップ助成金の正社員化コースにおける注意点は?

キャリアアップ助成金の正社員化コースの支給申請時には厳しい審査があります。

ポイントを箇条書きにしたのでご参考下さい。

  • 正社員と非正規雇用労働者の明確な定義を就業規則に明記すること
  • 労働条件通知書は、就業規則および労働の実態と一致していること
  • 勤怠管理と給与計算には法令違反がないこと
  • 賃金3%アップは、賃金上昇要件確認ツールを使用して計算すること
  • 手続きの順序と期限を厳守するためスケジュールを明確にすること

まとめ

キャリアアップ助成金とは何かについて、コースの種類や内容を解説してきました。

キャリアアップ助成金は審査が大変厳しくなっていますが、ルールをしっかりと把握してその通りに行えば、有効活用できる制度になっています。

非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を行い、人材の育成や定着を図れるよう、ぜひ上手に活用してみてください。

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