自治体の補助金と助成金の違いをわかりやすく解説!各制度の例も紹介

自治体の補助金と助成金の違いをわかりやすく解説!各制度の例も紹介

国や自治体の制度として、事業主が利用できる補助金や助成金があります。しかし、「そもそも補助金と助成金の違いが分からない」「自社で利用できる制度が分からない」という方も多いのではないでしょうか。

今回は、補助金と助成金の違いについて4つの観点から詳しく解説します。また、補助金・助成金におけるそれぞれの代表的な制度も紹介しますので、利用を検討している方はぜひ最後までご覧ください。

メルマガ & 公式LINE
この記事の監修者
プロフィール写真

森田洋生
1980年東京生まれ鹿児島在住

MBAの知識を活用して、
補助金や助成金の事業計画書作成事業を経営

顧客の事業を綿密に調査を行い、
計画書に一つ一つ魂を込めて
作成を行っている。

融資周り事情にも精通し、
国の認定支援機関に登録されている。

JAPANMENSA会員所属
趣味:料理つくり・ゲーム・SUP

目次

補助金と助成金の4つの違いとは?

補助金と助成金の違いについて、以下の4つの要素に分けて確認しましょう。

  • 目的・管轄の違い
  • 給付額の違い
  • 受給の流れの違い
  • 受給難易度の違い

それぞれの項目について解説します。

目的・管轄の違い

補助金と助成金は、異なる目的と管轄を持つ支援制度です。

助成金は主に厚生労働省が管轄し、その主な目的は雇用や労働環境の改善です。企業や団体は、この助成金を活用して雇用創出や働き方の改善などを推進することができます。

一方、補助金は経済産業省や中小企業庁が管理し、新規事業の支援や地域振興、公益に貢献する事業の促進を目的としています。これにより、特定の業種や地域の発展を促進するため、企業や団体に財政的支援を提供します。

助成金は雇用や労働環境の改善を目指したものであり、管轄は厚生労働省です。一方、補助金は新規事業や地域振興を促進し、管轄は経済産業省や中小企業庁となります。

給付額の違い

助成金と補助金を比較すると、一般的に補助金の給付額が大きい傾向にあります。助成金の給付額は数十万円から数百万円が一般的であり、大きくても数百万円の範囲が目安です。

一方、補助金の給付額は数百万円から数十億円に及ぶ場合もあり、制度や対象者によって大きく異なります。

このように、補助金は助成金よりもより広範囲で大規模な支援を提供する傾向があります。

受給の流れの違い

助成金と補助金は、受給までの流れが若干異なります。

助成金の場合、まず受給要件に基づいた実施計画を策定し、申請を行います。その後、実施計画に基づいて活動を開始し、活動終了後に報告書を提出して助成金の受給申請を行います。審査を経て支給決定がなされ、口座に助成金が入金されます。

一方、補助金の場合、申請を行い、審査を受けます。審査では事業の独自性や社会貢献性などが評価されます。採択された場合、指定された事業を実施し、事業終了後に事業実績の報告書や支払証憑類を提出して補助金の受給を行います。最終的に口座に補助金が入金される流れです。

受給難易度の違い

助成金の場合、基本的に受給要件を満たしている事業者は比較的容易に受給できます。従業員のスキル向上や賃金引き上げなどの労働関係条件を満たし、所定の書類を提出することで給付が可能です。

一方、補助金は採択件数や金額に限りがあり、申請しても受給が保証されるわけではありません。補助金の需要が高く、採択件数を上回る応募があるため、受給難易度は高い傾向にあります。申請書類を通じて事業の必要性を十分にアピールしないと、採択される可能性は低くなるでしょう。

代表的な補助金の例4選

代表的な補助金の例として、以下の4種類が挙げられます。

  • 小規模事業者持続化補助金
  • IT導入補助金
  • ものづくり補助金
  • 事業再構築補助金

それぞれの補助金制度について、内容を確認しましょう。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が販路拡大や業務効率化に取り組む際に援助を受けられる制度です。サポート範囲は幅広く、機械装置の導入費用やサイト・チラシの制作費用、展示会の出店費用などに利用できます。

小規模事業者持続化補助金は、以下に該当する小規模事業者が対象です。

業種条件
商業・サービス業5人以下
サービス業(宿泊業・娯楽業)20人以下
製造業・その他20人以下

補助額は50万〜200万円の間で決定し、補助率は全枠共通で2/3です。

申請枠補助額補助率
通常枠50万円2/3
賃金引上げ枠200万円2/3
卒業枠200万円2/3
後継者支援枠200万円2/3
創業枠200万円2/3

IT導入補助金

IT導入補助金とは、生産性向上・事業拡大のためにITツールを導入する際、中小企業や小規模事業者が利用できる補助金制度です。申請の際は「IT導入支援事業者」と連携する必要があり、導入できるツールはIT導入補助金事務局に登録されたものに限られます。

IT導入補助金の対象となる事業者は、以下に該当する小規模事業者と中小企業です。

対象事業者業種条件
小規模事業者商業・サービス業従業員が5人以下
サービス業(宿泊業・娯楽業)従業員が20人以下
製造業・その他従業員20人以下
中小企業製造業資本3億円以下もしくは従業員300人以下
卸売業資本1億円以下もしくは従業員100人以下
サービス業資本5,000万円以下もしくは従業員100人以下
小売業資本5,000万円以下もしくは従業員50人以下
ソフトウェア業資本3億円以下もしくは従業員300人以下
旅館業資本5,000万円以下もしくは従業員200人以下
その他の業種資本3億円以下もしくは従業員300人

なお、補助額は5万円から450万円、補助率は1/2から3/4です。

申請枠補助額補助率
通常枠(A類型)5万〜150万円未満1/2以内
回復型賃上げ・雇用拡大枠150万円~450万円以下1/2以内
デジタル枠5万円~100万円1/2以内
グローバル市場開拓枠~50万円以下3/4以内
グリーン枠50万円超~350万円2/3以内

ものづくり補助金

ものづくり補助金とは、革新的な商品やサービスの開発、生産プロセスの改善などを行う事業主をサポートする補助金制度です。

ものづくり補助金の対象となる事業者は、以下に該当する小規模事業者と中小企業です。

対象事業者業種条件
小規模事業者商業・サービス業従業員が5人以下
サービス業(宿泊業・娯楽業)従業員が20人以下
製造業・その他従業員20人以下
中小企業製造業資本3億円以下もしくは従業員300人以下
卸売業資本1億円以下もしくは従業員100人以下
サービス業資本5,000万円以下もしくは従業員100人以下
小売業資本5,000万円以下もしくは従業員50人以下
ソフトウェア業資本3億円以下もしくは従業員300人以下
旅館業資本5,000万円以下もしくは従業員200人以下
その他の業種資本3億円以下もしくは従業員300人

なお、補助額は100万円から4,000万円、補助率は1/2から2/3となります。

申請枠補助額補助率
通常枠100万~1,250万円1/2(小規模事業者または再生事業者は2/3)
回復型賃上げ・雇用拡大枠100万~1,250万円2/3
デジタル枠100万~1,250万円2/3
グローバル市場開拓枠100万~3,000万円1/2(小規模事業者または再生事業者は3分の2)
グリーン枠100万~4,000万円2/3

事業再構築補助金

事業再構築補助金とは、業態転換や事業再編、異業種参入、国内回帰などに企業が取り組む際に受けられる支援のことです。

事業再構築補助金は、以下に該当する中小企業や中堅企業が対象となります。

対象事業者業種条件
中小企業製造業資本3億円以下もしくは従業員300人以下
卸売業資本1億円以下もしくは従業員100人以下
サービス業資本5,000万円以下もしくは従業員100人以下
小売業資本5,000万円以下もしくは従業員50人以下
ソフトウェア業資本3億円以下もしくは従業員300人以下
旅館業資本5,000万円以下もしくは従業員200人以下
その他の業種資本3億円以下もしくは従業員300人
中堅企業上に並ぶ中小企業以外資本金10万円未満

なお、補助額は幅があり、100万円から1.5億円となっています。補助率については、1/2から2/3です。

申請枠補助額補助率
成長枠100万~7,000万円中小企業:1/2(大規模な賃上げを実施する場合は2/3)中堅企業:1/3(大規模な賃上げ実施する場合は1/2)
グリーン成長枠100万~1.5億円中小企業:1/2(大規模な賃上げを実施する場合は2/3)中堅企業:1/3(大規模な賃上げ実施する場合は1/2)
卒業促進枠成長枠・グリーン成長枠に準ずる中小企業:1/2中堅企業:1/3
大規模賃金引上促進枠100万~3,000万円中小企業:1/2中堅企業:1/3
産業構造転換枠100万~7,000万円中小企業:2/3中堅企業:1/2
物価高騰対策・回復再生応援枠100万~3,000万円中小企業:2/3中堅企業:1/2
最低賃金枠100万~1,500万円中小企業:3/4中堅企業:2/3

代表的な助成金の例4選

続いて、代表的な助成金の例として、以下の4種類を紹介します。

  • キャリアアップ助成金(正社員化支援)
  • トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
  • 働き方改革推進支援助成金
  • 業務改善助成金

それぞれの制度の概要を確認しましょう。

キャリアアップ助成金(正社員化支援)

キャリアアップ助成金は、厚生労働省が非正規雇用労働者のキャリア形成を推進するために設けた制度です。この制度は、有期雇用や派遣労働などの非正規雇用形態を正社員化したり、労働条件を改善したりする事業主に対して支給されます。

キャリアアップ助成金の受給対象となるのは、以下に該当する事業主です。

業種条件
小売業(飲食店を含む)資本金5,000万円以下または労働者50人以下
サービス業資本金5,000万円以下または労働者100人以下
卸売業資本金1億円以下または労働者100人以下
その他の業種資本金3億円以下または労働者300人以下

なお、キャリアアップ助成金は「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」の2つがあります。

正社員化コースの場合、支給条件や金額は以下の通りです。

条件金額
有期雇用から正規雇用(正社員)57万円
有期雇用から正規雇用(正社員)、なおかつ生産性向上要件を満たす場合72万円
無期雇用から正規雇用(正社員)28万5,000円
無期雇用から正規雇用(正社員)、なおかつ生産性向上要件を満たす場合36万円

もう一方の、障害者正社員化コースにおける支給条件や金額は以下の通りです。

対象者条件金額
重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者有期雇用から正規雇用(正社員)120万円
有期雇用から無期雇用(正社員)60万円
無期雇用から正規雇用(正社員)60万円
重度以外の身体障害者、重度以外の知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害と診断された者有期雇用から正規雇用(正社員)90万円
有期雇用から無期雇用(正社員)45万円
無期雇用から正規雇用(正社員)45万円

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

トライアル雇用助成金は、企業が求職者を正規雇用として採用する前に、一定期間(通常は3か月)の試用期間を設けて、彼らの適性や能力を評価する制度です。この制度は、企業と求職者がお互いを理解し合い、雇用の創出を促進することを目的としています。

トライアル助成金の対象となるための条件は26項目あり、一部を挙げると以下のような項目があります。

  • トライアル雇用の対象者を、紹介日前に雇用を約束していない事業主
  • トライアル雇用を行った企業の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の対象者を雇用した事業主
  • トライアル雇用を開始した日の前日から過去3年間に、同じトライアル雇用の対象者を雇用していない事業主

なお、トライアル雇用を希望する求職者は、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望する
  • 紹介日時点で、学校卒業後3年以内で、卒業後、安定した職業に就いていない
  • 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
  • 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている
  • 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いて
  • いない期間が1年を超えている
  • 就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する

出典:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)のご案内

母子家庭の母や父子家庭の父、また若者雇用促進法に基づき優良企業として認定された事業主が35歳未満の求職者がいる場合、1人当たりの助成金支給額は月額最大5万円、支給期間は最長で3か月間です。

働き方改革推進支援助成金

中小企業が働き方改革に取り組む際に役立つのが、働き方改革推進支援助成金です。この制度では、職場環境の改善や有給休暇の取得促進などにかかる費用の一部を助成します。主な目的は生産性の向上であり、それを実現するためのサポートとして提供されています。

この制度の対象となるのは、以下を満たす事業者です。

業種資本または出資額常時使用する従業員数
小売業(飲食店を含む)5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他の業種3億円以下300人以下

また、上記に加えて以下の条件をすべて満たしている必要があります。

  • 労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業主である
  • 交付申請時点で成果目標の設定条件を満たしている
  • 全ての対象事業場で、交付申請時点で年5日の年次有給休暇の取得に向けた就業規則を整備している

成果目標は、以下の3項目のうち1つ以上選択します。

  • 月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行う
  • 全ての対象事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入する
  • 全ての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入する

業務改善助成金

業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上を促進するための支援策の一つです。「事業場内最低賃金の引き上げを行った場合、その費用の一部が助成されます。

この制度の対象となるのは、以下の条件を満たす事業者です。

  • 中小企業・小規模事業者である
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内である
  • 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がない

「中小企業・小規模事業者」とは、以下の要件を満たしている事業者が含まれます。

業種資本または出資額常時使用する従業員数
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他3億円以下300人以下

助成額は、設備投資等に要した費用と助成率をかけて算出されます。

事業場内最低賃金額助成率
900円未満9/10
900円以上950円未満4/5(生産性要件に該当する場合は9/10)
950円以上3/4(生産性要件に該当する場合は4/5)

補助金や助成金に関してよくある質問

ここでは、補助金や助成金に関してよくある質問をまとめました。

個人事業主が利用できる補助金や助成金は何がある?

個人事業主が利用できる補助金・助成金の一部には、以下のものがあります。

  • 小規模事業者持続化補助金
  • 事業再構築補助金
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

補助金や助成金は返済が必要?

一般的に、補助金や助成金は返済が不要です。これらの支援は、政府や自治体、または民間機関などから企業や団体に対して提供される資金であり、返済義務がない場合がほとんどです。

まとめ

今回は、補助金と助成金の違いについて解説したのち、主な補助金や助成金の例を紹介しました。事業主が利用できる補助金や助成金の制度にはさまざまな種類があるため、状況に応じて適切な制度を活用することが求められます。

記事で紹介した制度例を参考に、自社が活用できる補助金・助成金を検討してみてはいかがでしょうか。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次