【2024年】賃上げに活用できる助成金・補助金制度を一覧で紹介

【2024年】賃上げに活用できる助成金・補助金制度を一覧で紹介

昨今、物価の高騰や最低賃金の引き上げにより、賃上げを検討する事業主の方も多いのではないでしょうか。賃上げの際には、政府や自治体が提供する助成金・補助金を活用する方法があります。

今回は、賃上げが必要とされている背景や助成金を活用するメリットについて解説したのち、賃上げに活用できる助成金・補助金制度を紹介します。

賃上げを予定している方や賃上げすべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

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この記事の監修者
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森田洋生
1980年東京生まれ鹿児島在住

MBAの知識を活用して、
補助金や助成金の事業計画書作成事業を経営

顧客の事業を綿密に調査を行い、
計画書に一つ一つ魂を込めて
作成を行っている。

融資周り事情にも精通し、
国の認定支援機関に登録されている。

JAPANMENSA会員所属
趣味:料理つくり・ゲーム・SUP

目次

賃上げを行う企業が増えている4つの背景

賃上げを行う企業が増えている背景には、以下の4つが挙げられます。

  • 物価の高騰
  • 最低賃金の引き上げ
  • 優秀な人材の確保
  • 賃上げの支援強化

それぞれについて解説します。

物価の高騰

物価の高騰は、現代の経済を悩ませる要因の一つです。資源価格の上昇や円安の進行など、複数の要因が絡み合い、消費財の価格を押し上げています。

例えば、ロシアのウクライナ侵攻や気候変動による天候不順、さらにはコロナ禍による製造ラインの停止などが挙げられます。これらの要因によってエネルギーや原材料費などの資源価格が上昇し、円安が進行しています。

企業は従業員の生活を守り、物価高騰に対応するために賃上げを実施するケースが増えています。

最低賃金の引き上げ

最低賃金の引き上げにより、賃上げせざるを得ない状況にある企業も多いでしょう。

2023年度における全国の最低賃金は過去最高の引き上げ幅となっており、それよりも低い賃金を定めていた企業は賃金の引き上げが必要です。法定最低賃金を下回る賃金を支払うことは違法であり、企業は必ず賃上げを行う必要があるため、その結果として企業が賃金を引き上げる動きが加速しています。

優秀な人材の確保

優秀な人材の確保は、企業にとって不可欠な課題です。他企業へ人材が流出してしまうのを防止するためや、少子高齢化による人手不足を解消するために賃上げを行う企業も存在します。

賃上げによって企業の待遇が向上することで、従業員の定着率が高まる効果が期待できます。また、高い待遇を提供する企業は、人材の獲得競争で優位に立つことができ、生産性や業務効率、業績の向上にもつながるでしょう。

賃上げの支援強化

賃上げする企業が増えた背景として、厚生労働省・中小企業庁による支援の強化も挙げられます。

最低賃金の引き上げに伴う支援策として、業務改善助成金やキャリアアップ助成金など、さまざまな助成制度が設けられています。これらの支援策は、企業が賃上げに取り組む際の負担を軽減し、積極的な賃上げを促進します。

物価高騰への対応や人材確保の必要性から、これらの助成制度の活用はますます重要になるでしょう。

賃上げの際に助成金を活用するメリット

企業が賃上げを行う際は、国や地方自治体が提供する助成金制度を利用可能です。助成金を活用することには、以下のメリットがあります。

  • 返済義務がない
  • 従業員の定着率アップ
  • 企業の生産性向上
  • 企業イメージアップ

それぞれの項目について解説します。

返済義務がない

助成金を活用するメリットの一つは、返済義務がないことです。

融資と異なるため後日に返済する必要はなく、助成金を活用すれば、職場環境の改善や販路開拓などのさまざまな取り組みに資金を充てられます。これにより、事業者は財務状況の改善を図れるでしょう。

多くの助成金は申請要件を満たすことで受給できるため、経営上の負担を軽減しながら事業を拡大するチャンスとなります。

従業員の定着率アップ

助成金を活用するメリットとして、従業員の定着率が向上しやすいことも挙げられます。

賃上げを実施するハードルが下がれば、労働条件が改善され、従業員のモチベーションが向上するため、従業員の定着率向上が期待できます。

このように、賃上げをはじめとした職場環境の改善により、魅力的な職場づくりや組織力の強化が可能です。結果として、企業は人材を安定して雇用でき、生産性向上にもつながるでしょう。

企業イメージアップ

助成金を活用するメリットの一つに、企業のイメージアップが期待できることがあります。

助成金を使って職場の環境を整え、働き方改革を行うことで、従業員に働きがいを感じてもらいやすくなるでしょう。これにより、多くの従業員が自社に誇りを持つため企業イメージが向上し、リクルート効果が期待できます。

また、従業員の満足度が高まることで、顧客に対するサービスの質も向上します。これにより、企業の信頼性や魅力を高め、市場での競争力強化にも貢献するでしょう。

賃上げに活用できる助成金・補助金制度一覧

2023年の10月から最低賃金の引き上げが実施され、これに伴う助成金や補助金について、厚生労働省や中小企業省による支援が強化されています。

ここでは、賃上げに活用できる助成金・補助金として、以下の制度を紹介します。

  • 業務改善助成金
  • キャリアアップ助成金
  • 事業再構築補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
  • 働き方改革推進支援助成金
  • 事業承継・引継ぎ補助金

それぞれの制度について、概要を見ていきましょう。

業務改善助成金

業務改善助成金とは、生産性の向上を目指す中小企業や小規模事業者が利用できる制度です。助成を受けるには、事業場内最低賃金の引き上げを行う必要があります。

この制度では、以下の条件を満たす事業者に対し、賃上げに伴う費用の一部が助成されます。

  • 中小企業・小規模事業者である
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内である
  • 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がない

なお、中小企業・小規模事業者とは、以下の要件を満たしている事業者を指します。

業種資本または出資額常時使用する従業員数
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他3億円以下300人以下

助成額については、設備投資等に要した費用と助成率を乗じた額です。

事業場内最低賃金額助成率
900円未満9/10
900円以上950円未満4/5(生産性要件に該当する場合は9/10)
950円以上3/4(生産性要件に該当する場合は4/5)

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者のキャリア形成を目的とした助成金制度です。この制度は厚生労働省が提供し、有期雇用や派遣などの非正規雇用から正規雇用への切り替えなどを行う場合に支給されます。

支給の対象となるのは、以下に該当する事業主です。

業種条件
小売業(飲食店を含む)資本金5,000万円以下または労働者50人以下
サービス業資本金5,000万円以下または労働者100人以下
卸売業資本金1億円以下または労働者100人以下
その他の業種資本金3億円以下または労働者300人以下

なお、キャリアアップ助成金は大きく分けて「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」の2つがあります。

正社員化コースについては、以下の支給条件や金額が設定されています。

条件金額
有期雇用から正規雇用(正社員)57万円
有期雇用から正規雇用(正社員)、なおかつ生産性向上要件を満たす場合72万円
無期雇用から正規雇用(正社員)28万5,000円
無期雇用から正規雇用(正社員)、なおかつ生産性向上要件を満たす場合36万円

また、障害者正社員化コースの支給条件や金額については以下の通りです。

対象者条件金額
重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者有期雇用から正規雇用(正社員)120万円
有期雇用から無期雇用(正社員)60万円
無期雇用から正規雇用(正社員)60万円
重度以外の身体障害者、重度以外の知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害と診断された者有期雇用から正規雇用(正社員)90万円
有期雇用から無期雇用(正社員)45万円
無期雇用から正規雇用(正社員)45万円

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、企業が業態転換・事業再編・異業種参入・国内回帰などに取り組む際に利用できます。

この制度の対象となるのは、以下に該当する中小企業や中堅企業です。

対象事業者業種条件
中小企業製造業資本3億円以下もしくは従業員300人以下
卸売業資本1億円以下もしくは従業員100人以下
サービス業資本5,000万円以下もしくは従業員100人以下
小売業資本5,000万円以下もしくは従業員50人以下
ソフトウェア業資本3億円以下もしくは従業員300人以下
旅館業資本5,000万円以下もしくは従業員200人以下
その他の業種資本3億円以下もしくは従業員300人
中堅企業上に並ぶ中小企業以外資本金10万円未満

なお、補助額は100万円から1.5億円と幅が広くなっており、補助率については申請枠や企業の形態に応じて1/2から2/3の間で決定します。

申請枠補助額補助率
成長枠100万~7,000万円中小企業:1/2(大規模な賃上げを実施する場合は2/3)中堅企業:1/3(大規模な賃上げ実施する場合は1/2)
グリーン成長枠100万~1.5億円中小企業:1/2(大規模な賃上げを実施する場合は2/3)中堅企業:1/3(大規模な賃上げ実施する場合は1/2)
卒業促進枠成長枠・グリーン成長枠に準ずる中小企業:1/2中堅企業:1/3
大規模賃金引上促進枠100万~3,000万円中小企業:1/2中堅企業:1/3
産業構造転換枠100万~7,000万円中小企業:2/3中堅企業:1/2
物価高騰対策・回復再生応援枠100万~3,000万円中小企業:2/3中堅企業:1/2
最低賃金枠100万~1,500万円中小企業:3/4中堅企業:2/3

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、販路拡大や業務効率化を行う小規模事業者が利用できる補助金制度です。機械装置を導入するほか、導入費用やサイト・チラシの制作費用、展示会の出店費用などに利用できます。

小規模事業者持続化補助金は、以下に該当する小規模事業者が対象です。

業種条件
商業・サービス業5人以下
サービス業(宿泊業・娯楽業)20人以下
製造業・その他20人以下

補助額は50万〜200万円の間で決定し、補助率は全枠共通で2/3です。通常枠の補助額は最大で50万円ですが、賃金引き上げ枠は最大200万円まで補助を受けられます。

申請枠補助額補助率
通常枠50万円2/3
賃金引上げ枠200万円2/3
卒業枠200万円2/3
後継者支援枠200万円2/3
創業枠200万円2/3

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、事業者が革新的な商品やサービスを開発する際や、生産プロセスの改善を行う場合に受給できる支援制度です。

この補助金は、以下の条件に該当する小規模事業者や中小企業が対象となります。

対象事業者業種条件
小規模事業者商業・サービス業従業員が5人以下
サービス業(宿泊業・娯楽業)従業員が20人以下
製造業・その他従業員20人以下
中小企業製造業資本3億円以下もしくは従業員300人以下
卸売業資本1億円以下もしくは従業員100人以下
サービス業資本5,000万円以下もしくは従業員100人以下
小売業資本5,000万円以下もしくは従業員50人以下
ソフトウェア業資本3億円以下もしくは従業員300人以下
旅館業資本5,000万円以下もしくは従業員200人以下
その他の業種資本3億円以下もしくは従業員300人

補助額については100万円から4,000万円の間で決定し、補助率は1/2から2/3となっています。

申請枠補助額補助率
通常枠100万~1,250万円1/2(小規模事業者または再生事業者は2/3)
回復型賃上げ・雇用拡大枠100万~1,250万円2/3
デジタル枠100万~1,250万円2/3
グローバル市場開拓枠100万~3,000万円1/2(小規模事業者または再生事業者は3分の2)
グリーン枠100万~4,000万円2/3

働き方改革推進支援助成金

中小企業が働き方改革を推進するための重要な支援策として、働き方改革推進支援助成金があります。この制度では、職場環境の改善や有給休暇の取得促進における一部の経費に対し、助成を受けられます。

主な目的は、企業の生産性の向上です。中小企業はこの助成金を活用することで、働き方改革の取り組みを促進し、労働環境の改善に取り組みやすくなるでしょう。

この制度は、以下を満たす事業者が対象となります。

業種資本または出資額常時使用する従業員数
小売業(飲食店を含む)5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他の業種3億円以下300人以下

上記に加えて以下すべての条件を満たしていることが求められます。

  • 労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業主である
  • 交付申請時点で成果目標の設定条件を満たしている
  • 全ての対象事業場で、交付申請時点で年5日の年次有給休暇の取得に向けた就業規則を整備している

なお、成果目標については3項目のうち1つ以上選択する必要があります。

  • 月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行う
  • 全ての対象事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入する
  • 全ての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入する

事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、事業の承継や引継ぎを支援し、国内の経済活性化を目指していくことを目的とした制度です。事業承継に関わる費用や、事業再編・統合に関連する新たな取り組みに必要な費用の一部に対し、補助を受けられます。

また、引継いだ事業を更に発展させるための費用や、M&Aを行う際の費用に関しても補助対象となります。

この補助金は、経営革新事業、専門家活用事業、廃業・再チャレンジ事業の3つのカテゴリに分かれており、対象者はそれぞれ以下の通りです。

  • 経営革新事業:経営資源の引き継ぎ型創業や事業承継(家族内の承継も含む)、過去数年間にM&Aを行った者、または補助事業期間内にM&Aを計画している者が対象
  • 専門家活用事業:補助事業期間中に経営資源の譲渡または受け入れを行う者が対象
  • 廃業・再チャレンジ事業:事業承継やM&Aを検討または実施し、それに伴って廃業などを行う者が対象

補助上限額や補助率については、以下のように定められています。

類型補助上限額補助率
経営革新事業〜600万円1/2・2/3
600〜800万円 ※一定の賃上げを実施する場合1/2
専門家活用事業〜600万円※M&A未成約の場合は〜300万円1/2・2/3
廃業・再チャレンジ事業〜150万円1/2・2/3

まとめ

今回は、中小企業や個人事業主が賃上げを行う際に活用できる助成金制度について解説しました。記事で挙げた中でもさまざまな制度があるため、事業内容や状況に合わせて適切な制度を選ぶことが大切です。

賃上げを検討している事業主や賃上げせざるを得ない状況にある方は、ぜひ記事の内容を参考にして、助成金制度を上手く活用しましょう。

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