「中小企業が使える補助金を探している」「返済不要の資金を上手く活用したい」と考える事業者は多いのではないでしょうか。補助金や助成金制度を上手く活用できれば、事業の経費負担を減らしてさまざまな取り組みを行えるようになります。
今回は、2024年に中小企業が利用できる補助金制度をいくつかまとめました。記事の後半では、補助金を申請する際の注意点も解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
中小企業が利用できる補助金一覧
中小企業が利用できる補助金について、ここでは以下の7つを紹介します。
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 事業承継・引継ぎ補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 中小企業省力化投資補助金
- 事業再構築補助金
- 中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金
それぞれの制度について、対象者や支援内容などを確認しましょう。
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、中小企業が生産性向上に向けた革新的な商品やサービスの開発、生産プロセスの改善を行う際に利用できる支援制度です。
この制度の対象となる事業者は、以下に当てはまる小規模事業者と中小企業です。
対象事業者 | 業種 | 条件 |
小規模事業者 | 商業・サービス業 | 従業員が5人以下 |
サービス業(宿泊業・娯楽業) | 従業員が20人以下 | |
製造業・その他 | 従業員20人以下 | |
中小企業 | 製造業 | 資本3億円以下もしくは従業員300人以下 |
卸売業 | 資本1億円以下もしくは従業員100人以下 | |
サービス業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員100人以下 | |
小売業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員50人以下 | |
ソフトウェア業 | 資本3億円以下もしくは従業員300人以下 | |
旅館業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員200人以下 | |
その他の業種 | 資本3億円以下もしくは従業員300人 |
補助額については100万円から4,000万円、補助率は1/2から2/3となっています。
申請枠 | 補助額 | 補助率 |
通常枠 | 100万~1,250万円 | 1/2(小規模事業者または再生事業者は2/3) |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 100万~1,250万円 | 2/3 |
デジタル枠 | 100万~1,250万円 | 2/3 |
グローバル市場開拓枠 | 100万~3,000万円 | 1/2(小規模事業者または再生事業者は3分の2) |
グリーン枠 | 100万~4,000万円 | 2/3 |
IT導入補助金
IT導入補助金とは、事業の成長や業務効率化を目的にITツールを導入する際、中小企業や小規模事業者が利用できる制度です。
補助金を受給するには、IT導入補助金事務局に登録されているツールを導入するほか、補助金を申請する際には「IT導入支援事業者」と連携するといった条件があります。
この補助金は、以下に該当する事業者が対象となります。
対象事業者 | 業種 | 条件 |
小規模事業者 | 商業・サービス業 | 従業員が5人以下 |
サービス業(宿泊業・娯楽業) | 従業員が20人以下 | |
製造業・その他 | 従業員20人以下 | |
中小企業 | 製造業 | 資本3億円以下もしくは従業員300人以下 |
卸売業 | 資本1億円以下もしくは従業員100人以下 | |
サービス業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員100人以下 | |
小売業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員50人以下 | |
ソフトウェア業 | 資本3億円以下もしくは従業員300人以下 | |
旅館業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員200人以下 | |
その他の業種 | 資本3億円以下もしくは従業員300人 |
補助額・補助率については以下の通りです。
申請枠 | 補助額 | 補助率 |
通常枠 | 5万〜150万円未満 | 1/2以内 |
インボイス枠(インボイス対応類型) | 10万〜350万円以下 | 1/2〜4/5以内 |
インボイス枠(電子取引類型) | (下限なし)〜350万円以下 | 1/2〜2/3以内 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万〜100万円以下 | 1/2以内 |
複数社連携IT導入枠 | 補助対象経費によって異なる(3,000万円以下) | 1/2〜4/5以内 |
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継補助金(事業承継・引継ぎ補助金)とは、事業の承継や再編成、統合の際に活用できる制度です。日本国内の経済活性化を目的としており、事業承継などに関する新たな取り組みを実施する際に、必要経費の一部を支援してもらえます。
また、事業の引継ぎ後に事業発展を目指す際の必要経費や、M&Aを行う際の費用の補助としても活用可能です。
この制度は主に3種類に大別されており、経営革新事業、専門家活用事業、廃業・再チャレンジ事業があります。
- 経営革新事業:経営資源を引き継ぐ形での新規事業創出、事業承継を目指す企業や個人を支援するプログラム。また、家族内での事業承継を行う者、過去数年間にM&Aを実施した経験のある者、補助事業期間内にM&Aを計画している者も対象。
- 専門家活用事業:経営資源の譲渡や受け入れを行う企業や個人が対象。補助事業期間中に経営資源の譲渡・受け入れを行う計画がある場合に適用。
- 廃業・再チャレンジ事業:事業承継やM&Aを検討・実施し、廃業して新しい事業を行う者が対象
この制度の補助上限額は最大で800万円、補助率は1/2〜2/3の間で決定します。
類型 | 補助上限額 | 補助率 |
経営革新事業 | 〜600万円 | 1/2・2/3 |
600〜800万円 ※一定の賃上げを実施する場合 | 1/2 | |
専門家活用事業 | 〜600万円※M&A未成約の場合は〜300万円 | 1/2・2/3 |
廃業・再チャレンジ事業 | 〜150万円 | 1/2・2/3 |
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が事業の発展を図る際に利用できる制度です。
販路の拡大や業務の効率化など、事業の成長に必要なさまざまな取り組みに対する支援を受けられます。具体的には、機械装置の導入費やWebサイト・チラシの作成費、展示会への出展費などに必要な経費の一部に対し、補助金を受け取れます。
これにより、小規模事業者は経済的な負担を軽減し、事業の成長を促進するためのリソースを確保できるでしょう。
この制度の受給対象となるのは、以下に該当する小規模事業者です。
業種 | 条件 |
商業・サービス業 | 5人以下 |
サービス業(宿泊業・娯楽業) | 20人以下 |
製造業・その他 | 20人以下 |
なお、補助額は50万〜200万円の間で決定し、補助率は全枠共通で2/3となっています。
申請枠 | 補助額 | 補助率 |
通常枠 | 50万円 | 2/3 |
賃金引上げ枠 | 200万円 | 2/3 |
卒業枠 | 200万円 | 2/3 |
後継者支援枠 | 200万円 | 2/3 |
創業枠 | 200万円 | 2/3 |
中小企業省力化投資補助金
中小企業省力化投資補助金は、中小企業などの事業者が売上拡大や生産性向上を目的に、人手不足を解消するための製品(IoT・ロボット等)を導入する際に活用できる制度です。
この制度は、人手不足の状態にある中小企業を対象に「省力化製品カタログ」に登録された製品を導入することで利用できます。以下は、導入可能な機器カテゴリ・対象業種・対象業種プロセスをまとめたものです。
機器カテゴリ | 対象業種 | 対象業務プロセス |
清掃ロボット | 宿泊業、飲食サービス業 | 施設管理 |
配膳ロボット | 飲食サービス業、宿泊業 | 配膳・下膳 |
自動倉庫 | 製造業、倉庫業、卸売業、小売業 | 保管・在庫管理、入出庫 |
検品・仕分システム | 倉庫業、製造業、卸売業、小売業 | 資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫 |
無人搬送車(AGV・AMR) | 倉庫業、製造業、卸売業、小売業 | 資材調達、加工・生産、検査、 保管・在庫管理、入出庫 |
スチームコンベクションオーブン | 飲食サービス業、宿泊業、小売業 | 調理 |
券売機 | 飲食サービス業 | 注文受付 |
自動チェックイン機 | 宿泊業 | 受付案内、予約管理、 請求・支払、顧客対応 |
自動精算機 | 飲食サービス業、小売業 | 請求・支払 |
出典:中小企業省力化投資補助事業 製品カタログ(令和6年4月15日)
事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、中小企業や中堅企業が事業の再構築を行う際に利用できます。具体的には、業態転換や事業再編、異業種参入、国内回帰などに取り組む際に、費用の一部に対して補助を受けられます。
この制度の対象となるのは、以下に該当する事業主です。
対象事業者 | 業種 | 条件 |
中小企業 | 製造業 | 資本3億円以下もしくは従業員300人以下 |
卸売業 | 資本1億円以下もしくは従業員100人以下 | |
サービス業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員100人以下 | |
小売業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員50人以下 | |
ソフトウェア業 | 資本3億円以下もしくは従業員300人以下 | |
旅館業 | 資本5,000万円以下もしくは従業員200人以下 | |
その他の業種 | 資本3億円以下もしくは従業員300人 | |
中堅企業 | 上に並ぶ中小企業以外 | 資本金10万円未満 |
補助額は申請枠によって異なり、100万円から1.5億円の間で決定します。また、補助率については中小企業と中堅企業によって異なり、1/2から2/3となっています。
申請枠 | 補助額 | 補助率 |
成長枠 | 100万~7,000万円 | 中小企業:1/2(大規模な賃上げを実施する場合は2/3)中堅企業:1/3(大規模な賃上げ実施する場合は1/2) |
グリーン成長枠 | 100万~1.5億円 | 中小企業:1/2(大規模な賃上げを実施する場合は2/3)中堅企業:1/3(大規模な賃上げ実施する場合は1/2) |
卒業促進枠 | 成長枠・グリーン成長枠に準ずる | 中小企業:1/2中堅企業:1/3 |
大規模賃金引上促進枠 | 100万~3,000万円 | 中小企業:1/2中堅企業:1/3 |
産業構造転換枠 | 100万~7,000万円 | 中小企業:2/3中堅企業:1/2 |
物価高騰対策・回復再生応援枠 | 100万~3,000万円 | 中小企業:2/3中堅企業:1/2 |
最低賃金枠 | 100万~1,500万円 | 中小企業:3/4中堅企業:2/3 |
中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金
中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金は、中堅・中小企業が足元の人手不足を解消するための拠点新設や設備投資の際に利用できる制度です。大規模投資により事業者が持続的な賃上げを行うことを目的としており、投資額は10億円以上からとなります。
この制度の対象となるのは「常時使用する従業員数が2,000人以下の中堅・中小企業」で、建物費・機械装置費・ソフトウェア費・外注費・専門家経費の5つに対して支援を受けられます。
なお、一定の要件を満たしていればコンソーシアム形式で最大10社の共同申請も対象です。ただし、みなし大企業や事業内容が1次産業を主たる事業である場合は補助対象外となるため注意しましょう。
補助事業の要件については、以下の通りです。
- 投資額10億円以上(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分)
- 賃上げ要件(補助事業の終了後3年間の対象事業に関わる従業員等1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が、事業実施場所の都道府県における直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上)
出典:中堅・中小企業の賃上げに向けた 省力化等の大規模成長投資補助金
補助金を申請する際の注意点
ここからは、補助金を申請する際の注意点について、以下の5つのポイントを紹介します。
- 最新の情報を確認すること
- 必ず採択されるわけではない
- 補助金を受け取れるのは実績の報告後
- 経費の全額が補助されるわけではない
- 虚偽の申請はしないこと
それぞれのポイントについて確認しましょう。
最新の情報を確認すること
補助金は、政府や地方自治体が特定の政策目標を達成するために設ける制度です。ただし、補助金の内容や条件は年度ごとに変化することも珍しくなく、同じ補助金であっても、公募の内容や申請条件が異なることがあります。
また、永久的に制度が続くとも限らないため、申請する前には最新の情報を確認することが欠かせません。
具体的には、政府の公式Webサイトや関連機関の情報源を活用し、最新のガイドラインや要項を入手することが大切です。また、補助金の申請手続きについても変更される可能性があるため、公開されている情報を注意深く確認しましょう。
必ず採択されるわけではない
補助金の対象事業者であるからといって、申請後に必ずしも受け取れるとは限りません。受給できるかどうかは、競争率や提案内容の優位性に左右されます。そのため、申請しても採択されないといったケースもあります。
補助金の申請には多くの時間を要しますが、必ずしも採択されるとは限らないことを念頭に、リソースの割きすぎには注意しましょう。万が一補助対象外となった場合、事業に支障をきたす可能性があるため、慎重な検討が欠かせません。
また、補助金は言葉の通り「補助的な資金」であり、主要な資金源ではありません。そのため、事前に十分な社内リソースを確保し、補助金の申請を補完的な手段として考えることが重要です。
さらに、申請プロセスや条件が複雑である場合も多いため、専門家のサポートを受けることも検討すべきでしょう。補助金の申請に際しては、事前の慎重な計画とリソースの適切な管理が不可欠です。
補助金を受け取れるのは実績の報告後
補助金の受給を申請しても、すぐに受け取れるわけではないため注意しましょう。
受給までの一般的な流れとして、まずは申請期間内に申請を行い、その後に採択・不採択の結果を待つことになります。無事採択されたあともすぐに支払われるのではなく、補助対象の事業を実施し、実績報告を提出してから支給される仕組みです。
そのため、補助金を受けるためには書類を揃えて申請するだけでなく、事業を実施するための資金が必要です。補助金が支給されるまでの間、備品の購入や給与の支払いなどの経費は自己資金で賄わなければなりません。
特に、大規模な補助金を得たいと考えている場合、その分の資金調達が必要になるでしょう。補助金を申請する際には、自社の資金状況を把握し、必要な資金を準備しておくことが重要欠かせません。
経費の全額が補助されるわけではない
補助金の申請が受け入れられても、すべての経費が補助されるわけではありません。補助率は、一般的に「2分の1」や「3分の2」などの割合で支援されます。つまり、補助金として受け取れる額は、実際にかかった経費の一部に過ぎないため注意しましょう。
そのため、補助金の受け取り対象であるからと言って、余計な経費を使うことは避けるべきです。必要のない投資や過度な支出をしてしまうと、最終的には自社の資金状況が悪化する可能性があります。補助金を申請する際には、計画を立てて必要な経費を把握し、適切に活用することが重要です。
虚偽の申請はしないこと
補助金の虚偽申請は、絶対に避けるべき行為です。虚偽の申請が発覚すれば、補助金の返還が求められるばかりか、懲役や罰金の可能性もあります。代表者が逮捕されたり、懲役刑を受けたりした場合、事業者としての信用を失ってしまい、事業の存続が難しくなることもあるでしょう。
悪質な業者やブローカーの誘いを受ける場合もあるため、怪しい誘いには乗らず、十分な注意を払いましょう。不正行為が発覚しても、それらの業者やブローカーは責任を負ってはくれません。
まとめ
今回は、2024年に中小企業が活用できる補助金制度について解説しました。補助金にはさまざまな種類があり、目的別にそれぞれの制度を活用可能です。
記事で紹介した制度以外にも多くの補助制度が存在するため、自社の事業内容や事業規模に合わせて適切な制度を活用してみてください。