事業を行う上では、常に順調な状態が続くとは限らず、売上が低迷してしまう時期もあるでしょう。また、自己資金だけでは資金練りが難しくなる可能性もあります。
そのような場合、国や自治体が提供する助成金制度を利用し、資金を調達する方法があります。
今回の記事では、神奈川県横浜市で利用できる助成金・補助金制度について紹介します。後半では、個人が利用できる助成金制度も紹介しますので、世帯支援を受けたいと思っている方はそちらを参考にしてください。
横浜市で事業主が利用できる助成金・補助金一覧
横浜市で事業主が利用できる助成金・補助金制度として、ここでは以下の7種類を取り上げます。
- かながわ新型コロナウイルス感染症医療・福祉応援基金
- キャリアアップ助成金(正社員化支援)
- 雇用調整助成金
- 特定求職者雇用開発助成金
- 研究拠点形成費等補助金
- 外国人介護人材受入施設環境整備事業費補助金
- 中小規模事業者省エネルギー設備導入支援補助金
それぞれの制度について、概要を確認しましょう。
かながわ新型コロナウイルス感染症医療・福祉応援基金
「かながわ新型コロナウイルス感染症医療・福祉応援基金」は、新型コロナウイルス感染症に対応してきた医療従事者への感謝の気持ちを示すために設立されました。この基金を活用し、県民や企業からの寄附金を用いて、医療従事者の勤務環境改善などを目的とした支援を行います。
具体的には、医療機関に対して支援金を給付し、医療従事者の勤務環境の改善に取り組みます。
この基金の対象となるのは、神奈川県モデル認定医療機関・発熱診療等医療機関です。なお、対象となる事業は「勤務環境の改善」や「福利厚生の充実」が挙げられます。
支給額上限については、神奈川モデル認定医療機関が200万円、発熱診療等医療機関が20万円です。
キャリアアップ助成金(正社員化支援)
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の雇用環境を改善し、処遇を向上させるための支援制度です。正社員化支援は事業主が正社員化を促進することに焦点を当てており、「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」の2つのメインコースがあります。
「正社員化コース」では、非正規雇用労働者を正規の社員として雇用することを支援します。このコースでは、雇用形態の安定化や処遇の向上を図るための助成金が提供されます。
一方、「障害者正社員化コース」は、障害者を積極的に雇用し、その雇用環境を整えることを目的としています。障害者雇用に特化した支援が提供され、雇用主が障害者の採用や雇用継続を促進するための助成金が支給されます。
対象となるのは、全コース共通で以下に該当する事業主です。
業種 | 条件 |
小売業(飲食店を含む) | 資本金5,000万円以下または労働者50人以下 |
サービス業 | 資本金5,000万円以下または労働者100人以下 |
卸売業 | 資本金1億円以下または労働者100人以下 |
その他の業種 | 資本金3億円以下または労働者300人以下 |
正社員化コースの場合、支給条件や金額は以下の通りです。
条件 | 金額 |
有期雇用から正規雇用(正社員) | 57万円 |
有期雇用から正規雇用(正社員)、なおかつ生産性向上要件を満たす場合 | 72万円 |
無期雇用から正規雇用(正社員) | 28万5,000円 |
無期雇用から正規雇用(正社員)、なおかつ生産性向上要件を満たす場合 | 36万円 |
また、障害者正社員化コースの場合、支給条件や金額は以下の通りです。
対象者 | 条件 | 金額 |
重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者 | 有期雇用から正規雇用(正社員) | 120万円 |
有期雇用から無期雇用(正社員) | 60万円 | |
無期雇用から正規雇用(正社員) | 60万円 | |
重度以外の身体障害者、重度以外の知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害と診断された者 | 有期雇用から正規雇用(正社員) | 90万円 |
有期雇用から無期雇用(正社員) | 45万円 | |
無期雇用から正規雇用(正社員) | 45万円 |
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、経済的な状況により事業規模を縮小せざるを得ない事業主を支援するための制度です。
この助成金は、企業が雇用を維持するために必要な措置に対して一部の費用を補助し、休業や教育訓練、または出向などの対応策を支援します。その目的は、企業の持続可能性を確保し、雇用を守ることにあります。
雇用調整助成金は、以下の全てを満たす事業主が対象です。
- 雇用保険の適用事業主であること
- 売上高又は生産量などの事業活動を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること
- 雇用保険被保険者数及び受け入れている派遣労働者数による雇用量を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上増加していないこと
- 実地する雇用調整が一定の基準を満たすものであること。※
- 過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主が新たに対象期間を設定する場合、直前の対象期間の満了の日の翌日から起算して一年を超えていること。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響にともなう特例による雇用調整助成金(コロナ特例)の支給を受けたことがある場合は、当該特例に係る対象期間内の最後の判定基礎期間末日(助成金が支給されたものに限る。)の翌日から起算して一年を超えていること
※
- 休業の場合:労使間の協定により、所定労働日の全一日にわたって実施されるものであること
- 教育訓練の場合:休業の場合と同様の基準のほか、教育訓練の内容が、職業に関する知識・技能・技術の習得や向上を目的とするものであること
- 出向の場合:対象期間内に開始され、3か月以上1年以内に出向元事業所に復帰するものであること
助成額は、休業時には「事業主が支払った休業手当負担額」、教育訓練時には「賃金負担額の相当額」に、それぞれ助成率を掛けて決定されます。さらに、教育訓練を受けた場合には、1人1日あたり1,200円の追加加算が行われます。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、特定の条件を満たす求職者を雇用する際に利用できる助成金です。この助成金には、以下の3つのコースが用意されています。
- 特定就職困難者コース
- 発達障害・難治性疾患患者雇用開発コース
- 障害者初回雇用コース
それぞれのコースについて、内容を紹介します。
特定就職困難者コース
「特定就職困難者コース」は、雇用が困難な障がい者や高齢者、母子・父子家庭などの人々を雇用する企業に支給される助成金制度です。この助成金を受けるには、雇用された労働者を65歳まで継続して雇用し、かつその期間が2年以上である必要があります。
支給額は、障がいの程度や企業の規模によって異なります。例えば、重度の障がい者や45歳以上の障がい者、精神障がい者に対しては、年額240万円(中小企業では100万円)が最大3年間(中小企業では1年6ヶ月)支給されます。
一方、短時間労働者には年額80万円(中小企業では30万円)が最大2年間(中小企業では1年間)にわたって支給されます。
発達障害・難治性疾患患者雇用開発コース
発達障害や難治性疾患を抱える個人を雇用する企業向けの助成プログラムである「発達障害・難治性疾患患者雇用開発コース」は、雇用継続や労働者の配慮に焦点を当てています。
この助成金を受けるためには、対象の労働者をハローワークを介して雇用し、その雇用を65歳まで2年以上継続して雇用する必要があります。また、事業主は雇用した労働者に対する配慮事項を報告し、約半年後にはハローワークの職員による職場訪問を受けることが必要です。
申請者が中小企業の場合、短時間労働者1人あたり年額80万円を2年間、それ以外の労働者については年額120万円を2年間にわたって支給されます。申請者が中小企業でない場合は、短時間労働者1人あたり年額30万円を1年間、それ以外の労働者1人あたり年額50万円を1年間受け取れます。
障害者初回雇用コース
障害者の雇用を初めて導入する中小企業向けの支援制度である「障害者初回雇用コース」は、43.5人から300人の従業員を有する中小企業を対象としています。
この制度は、障がい者雇用義務が適用される企業が初めて障がい者を雇用した際に適用されます。助成金の額は120万円で、雇用開始日から3か月後までの期間内に、法定の雇用率を達成した場合に支給されます。
研究拠点形成費等補助金
研究拠点形成費等補助金は、教育研究拠点を形成する大学・短期大学・高等専門学校などが必要な経費を支援するために、文部科学省によって提供されるものです。国の教育研究の活性化と質の高い人材育成を目的としています。
この補助金の対象となるのは、以下の2つの事業者です。
- 人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業を行う大学の設置者
- 次世代のがんプロフェッショナル養成プランに取り組む大学の設置者
なお、補助対象となる経費は、物品費や人件費・謝金、旅費などが挙げられます。
外国人介護人材受入施設環境整備事業費補助金
外国人介護人材受入施設環境整備事業費補助金は、外国人の介護職員の就労定着を目的としたもので、環境整備のための経費の一部を支援します。
交付の対象となるのは、神奈川県内で介護保険法上の介護事業を営み、外国人介護職員を受け入れている施設です。
補助対象となる事業 | 具体例 |
外国人介護職員とのコミュニケーションを促進する取組 | 外国人材が母国を出国する前に雇用予定先の介護施設等と行うオンラインによる通話介護業務マニュアル(介護の手順、介護用語の統一化等)の作成・翻訳多言語翻訳機の購入又はリース外国人介護職員の日本語学習の支援(日本語講師による教育等)職員の異文化理解を図るための教育・研修の受講又は実施コミュニケーションの促進に資するような研修の受講 |
外国人介護職員の介護福祉士の資格取得に必要な取組 | 介護福祉士資格取得を目指すために必要な教材の購入外国人介護職員を対象とした外部講習等への参加、日本語講師による教育 |
外国人介護職員の生活支援に必要な取組 | 孤立防止やホームシック等メンタルヘルスケア地域の日本人や外国人との交流を促進するための交流会開催 |
出典:https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n7j/cnt/f535601/gaikokujinkaigo.html
また、補助金額は1施設あたり30万円が基準となり、2/3までの範囲内で補助を受けられます。経費の実支出額と補助基準額を比較し、低いほうの金額に2/3を掛けた額が支給される仕組みです。
なお、対象経費は以下が挙げられます。
- 報酬
- 共済費
- 賃金
- 報償費
- 旅費
- 需用費(食糧費除く)
- 役務費(通信運搬費、手数料、保険料、通訳料、翻訳料)
- 委託料
- 使用料及び賃借料
- 備品購入費(税込5万円以上のもの)
- 負担金、補助及び交付金
中小規模事業者省エネルギー設備導入支援補助金
中小規模事業者省エネルギー設備導入支援補助金は、神奈川県が中小事業者の省エネルギー設備導入や既存設備の更新を促進するために提供している補助金制度です。この制度の目的は、中小企業が省エネルギー設備を導入することによって、エネルギーの効率的な利用を促進し、環境負荷の削減や経済的なメリットを享受できるようにすることです。
この補助金を利用することで、以下にかかる購入費用や設計費、工事費について、一部を補助してもらえます。
- 中小企業は事業所内の業務用空調設備などの省エネルギー設備の導入
- 既存の設備の更新
補助金額は、申請した経費のうちの3分の1が補助され、上限額は500万円です。
申請事業者が「かながわ再エネ電力利用認定事業者」である場合、補助金の上限額が600万円まで拡大されることも特長です。これにより、再エネルギーを活用した事業者は、より多くの支援を受けることが可能となります。
この補助金制度を活用することで、中小企業は経済的なメリットを得るだけでなく、環境への負荷を軽減するとともに、持続可能なビジネス運営に貢献できる利点があります。
横浜市で個人が利用できる助成金・補助金一覧
ここからは、横浜市で個人が利用できる助成金・補助金制度について、次の3つを紹介します。
- 出産・子育て応援事業
- 住民税非課税世帯への緊急支援給付金
- 住民税均等割のみ課税世帯への緊急支援給付金
それぞれの制度について、内容を確認しましょう。
出産・子育て応援事業
横浜市の出産・子育て応援事業応援事業では、妊婦や新生児の養育者が受給できる応援金を提供しています。
この制度の対象となるのは、以下に該当する方です。
- 令和5年2月1日以降に妊娠届出をされた妊婦:出産応援金として、妊婦1人あたり5万円
- 令和5年4月1日以降に生まれた新生児の養育者:子育て応援金として、新生児1人あたり5万円
申請後に審査が行われ、不備がなければ2〜3ヶ月で振込されるようです。
参考:出産・子育て応援事業
住民税非課税世帯への緊急支援給付金
横浜市では、住民税非課税世帯への緊急支援給付金を受け取れます。
以下の2つの条件を満たしている世帯に対し、7万円が支給されます。
- 令和5年12月1日時点で横浜市に住民登録があること
- 世帯全員の令和5年度住民税均等割が非課税であること
なお、上記を満たしていても、住民税の課税対象である扶養親族からなる世帯は支給の対象外となるため、注意しましょう。
参考:
住民税均等割のみ課税世帯への緊急支援給付金
横浜市では、住民税均等割のみ課税となっている世帯へ、緊急支援給付金として1世帯あたり10万円と、子ども1人あたり5万円が支給されます。
詳しい条件については、以下の通りです。
- 令和5年12月1日時点で横浜市に住民登録があること
- 世帯全員が令和5年度における住民税の「均等割のみ課税者」又は「均等割のみ課税者及び非課税者」であること
なお、非課税世帯への給付金と同じように、住民税の課税対象である扶養親族からなる世帯の場合、受給対象外となります。
また、支給は1回のみに限られ、他の自治体の制度と重複して受給することはできません。
まとめ
今回は、神奈川県横浜市で利用できる助成金について、事業主が利用できる制度を7つ、個人が利用できる制度を3つ紹介しました。
助成金を受け取るためには、提供する自治体や団体が指定する条件を満たしている必要がありますが、返済義務のない資金を支援してもらえるため、資金練りに困っている事業主はぜひ活用したい制度といえます。
記事で紹介した助成金を参考に、現在の事業に適している制度を選び、受給のための準備を進めてみてはいかがでしょうか。